星組バウ『MY LAST JOKE』感想
こんにちは、くららです。
星組バウホール公演『MY LAST JOKE』を金曜日に観劇しました。

どう感想を書いてよいか少し悩みました。
それぞれの感性に訴える作品だと思います。ポーの作品について詳しくない私には観劇した時は今ひとつの印象でしたが、家に帰ってポーの作品についていろいろ調べたりしながら、竹田先生が訴えられたかったことが少しずつ理解できました。

出演者たちは、皆さん実力を発揮して、それぞれの役を好演されていました。日数が経つほど更に深められていくと思います。

特に天飛さんも詩さんも歌がとてもお上手で、歌の力に惹きこまれました。お二人とも客席でも歌われます。二人のデュエットも心地良かったです。

『MY LAST JOKE』感想

竹田先生が、エドガー・アラン・ポーとその作品を深く研究つくされてこの作品を作られているのがとても伝わってきました。
果たしてこの脚本が宝塚の作品としてふさわしかったのかどうか?ラストは宝塚らしい終わり方でしたが。

真っ暗な舞台の中央に重厚なゴールドの扉が置いてあり、天飛さんの暗い開演アナウンスからはじまります。この扉は劇中で効果的に使われていました。
第一印象のダークな静かな世界観が、その後もずっと続いていきました。
1幕、天飛さんの歌いながらの客席降りのあたりなど、明るい場面も少しありましたが。

天飛さんをはじめ、星組のダンサーさんたちが沢山いらっしゃるのに、キレの良いダンスはプロローグで少しだけでした。フィナーレはありません。文学的な作品なので余韻を残すために、フィナーレを省かれたのだと思いますが、そのあたりは少し残念でした。
振りはついていますが、ストレートプレイという印象です。

主演のエドガーとヒロインのヴァージニア

エドガーが24歳、ヴァージニアが13歳の時に結婚しました。二人の出会いはそのもう少し前です。
ヴァージニアは22歳で結核の最初の兆候の喀血があり、27歳で死去します。

年齢については、公演プログラムで触れられていませんが、ふたりの年齢を理解してから観た方が、よりストーリーを理解しやすいと思いました。

エドガー・アラン・ポー……天飛華音

エドガーは若い頃に両親と育ててくれた義母を相次いで失い、自分から大切な人を奪う死の存在に常に脅かされている暗い印象の人物です。時に激情を爆発させたり、人間的なエドガーを、天飛さんが繊細に丁寧に演じられていました。

執筆のために机に向かうエドガーの表情は憂鬱で不機嫌そうですが、11歳年の離れたいとこのヴァージニアが登場するたびに、やさしい表情に一変し、ヴァージニアへの愛が伝わってきました。

二枚目ぶりも美しく、低音ボイスの深い歌声に魅了され、セリフ回しも明瞭で、天飛さんは実力を遺憾なく発揮されていました。

バウの初主演で、こういう暗い難しい芝居中心の役に挑戦されたことは、高い芝居力の証明になったと思います。

さらにこれからの糧になると思いました。

ヴァージニア……詩ちづる

白い衣装の無邪気で無垢で茶目っ気もあるヴァージニアが驚くほど可愛くて、エドガーの暗い心が自然に開かれていくのが納得できました。少女を自然に演じることのできる詩さんの可憐さは特別です。

妻となってからは深い愛と寂しさを抱いた大人の女性へと変貌し、声色も少女時代とは変わっていて、その後命の炎が消えていくはかないヴァージニアを好演されていました。幅のある演技力に引き込まれました。
透き通る歌声も素晴らしく、可憐な容姿と的確な演技力、ヒロインが似合う娘役さんだと思いました。

大鴉(おおからす)……鳳真斗愛

エドガーが抱え続けた死への潜在意識を、表現する役。
エドガーに、トートのような雰囲気で(髪の長さは『ポーの一族』のエドガー)つきまとい、時に狂気をはらんだ顔つきで迫ります。
死神風のメイクの鳳真さんの表情が、死の恐怖を的確にあらわされていて、ミステリアスでダークな作品の印象をより深めていました。

「宝塚GRAPH11月号」の「Match礼真琴×舞空瞳」コーナーで、「星組で今一番注目の人と言えば?」で、お二人とも「ほうま」「もえか」と鳳真斗愛さんのお名前をあげていらっしゃいました。

「大鴉」役で、鳳真斗愛さんの芝居力ダンス力を魅せてくださっています。本当に只者では無いすごい方です。

「大鴉」の詩について

妻ヴァージニアが肺結核で苦しんでいる時に、長詩『大鴉(“The Raven”)』が好評となり、時の人となり、ようやく詩人として認められるようになりました。

ポー独自の詩論に基づいて、論理的に構築されたこの作品は、様式化された韻による音楽性と暗喩に満ちた言葉を用いて、「知識」と「感情」の葛藤、「愛」と「死」、「神」と「魔」、そして人間の内にある暗闇ともいえる、「無」と「理由のない恐れ」などを主題にした抒情詩です。引用「エドガー・アラン・ポー「大鴉」(The Raven)を読む」

劇中に出てくる「Nevermore(二度とない)」も、「大鴉」の詩の中のもので、主人公が大鴉に名前を聞くと、大鴉は聞かれるてびに「Nevermore(二度とない)」と答えます。その「Nevermore」が他の箇所で使われていました。

このように、この作品には、異なる場面で同じセリフを繰り返して使われたりなど、ポーへのオマージュが随所にあって、印象づけられていて、とても文学的な作品になっていました。

エドガーを取り巻く編集者や作家たち

エドガーの敵

グリスウォルド…碧海さりお
エドガーと対立する編集者。
エドガーの敵役として、独特の存在感でバトルされていました。

ロングフェロー…大希颯
エドガーのライバルの詩人。
貴公子的な雰囲気で、歌のロングトーンの魅せ場がありました。
かなり伸びていましたが、回を重ねるごとにもっと長くなりそう。
長身で脚が長くてイケメンオーラが漂っていました。
「顔がいい」と言われるセリフも。
エドガーの敵方ですが、ロングフェローの役は人柄も良い役です。

エドガーの味方

フランシス…瑠璃花夏(女流作家)
華やかな容姿できれいな声で芝居上手で、とっても安定感ある娘役さん。
エドガーと手紙のやり取りをしたり親密な関係なのに、エドガーとのロマンスは描かれず、エドガーの妻のヴァージニアのことを純粋に心配していて、嫌みが全くない良い人として描かれていました。

ナサニエル…稀惺かずと(105期)
エドガーを支える編集者。
プロローグの後、ストーリーテラーのような役わりをされていました。その後別の人がストーリーテラーをして、再びストーリーテラーされたり、一貫性はありませんでした。
エドガーの理解者となる編集者で、良い場面で出番があります。

セリフが明瞭で、明るい好青年で、キラキラとしたスター性を感じました。高い声なのが少し気になりました。

その他

エリザベス・F・エレット… 乙華菜乃(106期)
セリフ回しもお上手で、大人っぽい雰囲気の女性もお似合いでした。

エリザベス・ポー …紅咲梨乃(102期)
エドガーの母親。
情感あふれる儚い母親をソロもあり、明確に演じられていました。

ウィリアム・バートン…夕陽真輝
何でもない役でもコミカルで、爪痕を残される存在感に脱帽。

影ソロ…茉莉那ふみ(108期)
108期の首席の茉莉那さん、影ソロをはじめ、溌剌と活躍されていました。

最後のご挨拶では、鳳真さん、稀惺さん、大希さんの3人が一緒でした。星組の注目の若手スターさんですね。

博多座では超ハッピーなミュージカル『ミー&マイガール』を上演していて、バウホールでは滅多にお目にかかれない暗いイメージのストレートプレイ『My Last Joke-虚構に生きる-』が上演されていて、この星組の振れ幅の大きさはすごいですね。

どちらのチームにも役者が揃っていて、礼真琴さんも加わって次の星組全員が揃うお正月公演『RRR』『VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)』への期待で胸が膨らみました。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
ランキングに参加しています。ポチッとバナーをクリックしていただけると嬉しいです♪
にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村
いつも応援してくださってありがとうございます。

スポンサーリンク