望海風斗「2枚目を目指すのはやめなさい」by小池先生
こんにちは、くららです。
昨日雪組の感想を書きましたが、決して雪組公演を否定しているわけではありません。
日々熟成されて、面白くなると確信しています。私の頭の固さに問題があったと思いました。

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小池先生の脚本についていろいろと考えていたら、昨日放送のNHK総合「宝塚スペシャルラウンジ」に 小池修一郎氏がインタビューで出演されました。
一番聞きたかったことをタイムリーに聞けたので、ご紹介したいと思います。

そして「歌劇1月号」の雪組座談会を読んでいたら面白い内容がありました。
望海さんが下級生の時に小池先生から「二枚目を目指すのはやめなさい」とすごく言われて、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の映画を見て、ヌードルス役のロバート・デ・ニーロのカッコ悪いんだけど、そこがカッコよく何か残る、そういう男役を目指していくキッカケになったという発言がありました。
カッコ良い望海さんに何を言う?とも思いましたが、小池先生は、そういう言葉を仰った覚えは無いようでした。
生徒にキツメの言葉で発破をかけるのが小池先生の愛情表現の一つでもあるようです。

まず「宝塚スペシャルラウンジ」で小池先生が語られたことをご紹介します。

小池修一郎氏が舞台化するポイント

小池修一郎氏が海外作品を宝塚歌劇にする時に「これなら舞台化できる」と判断するポイントは?゛

宝塚化するというのは、有名な小説や実写化された映画アニメーション化することと似ているのではないかなと思います。
まずキャラクターの作りこみ!
キャラクターの作り方が、リアルな生の男性では無いから、女性たちが演るものが造形化していくわけですね
そのプロセスはおそらくは、絵に描き起こして動かしていく、動画にしていくというのと、多分生徒たちが役をつくることと、共通することがあるのではないか、キャラクターの外見だけでなく、行動原理とかその気持ちの表現はこうするとか、似ているところがあり、宝塚の男役がするなら、こういう風にと考えて脚色というか、変えていくわけですね。

まあそれに準じて宝塚の舞台機構の範囲に収めるというわけですね。ある時代、あるキャラクターとかビジュアルと言いますけど、扮するところから入るから、その人がその恰好を扮したらその魅力があるのでは無いか意外性があるのでは無いか、そういう所を考えますね。
ストーリーも大事だけど、どんなストーリーであれ、主役は主役であったりするから、こういうキャラクターをその人が演じてどういったら面白いのでは無いかとその時のインスピレーションで考えます。

小池家先生が作品を作られる時、まず、生徒のキャラクターを作りこんで宝塚の舞台にできるかを考えられるのですね。
作品をアニメーション化するのと同じような工程で、先生の頭のなかには、舞台化すると決まった時点で、まず舞台で演じられるキャラクターが出来上がり、その後脚色しながらストーリーが展開していくようです。
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』では、ポスターが公表された時点から、1幕ラストの海辺のホテルのレストラン~スイートルーム~の薔薇のシーンが裏表紙になっていました。

9月27日(金)に「制作発表会」が行われた時は、ヌードルス役の・望海風斗と、デボラ役の・真彩希帆、マックス役の彩風咲奈、ジミー役の彩凪翔、キャロル役の朝美絢の5名が扮装して、作品の世界観を表現するパフォーマンスを披露されました。その時点では「ナンバー」も「脚本」も出来上がっていなかったので。

実際に舞台を観劇すると、制作発表で披露された、世界観そのままそのキャラクターが舞台の上にいました。
「公演プログラム」にも、その世界観のままのプロマイドや写真が掲載されていて、小池先生の「キャラクターのイメージ先行」の作品づくりが伝わってきます。

「小池先生の本がおそい」とは、よく聞く話ですが、登場するキャラクターのイメージが先生の頭の中にしっかりあるので、枝葉は後付けで何とでもなるのでしょう。

そして「意外性」のキャラクター作りもされると仰っていましたが、今回それは朝美絢くんが演じたキャロルでは無いかと思います。
原作とは全く違う個性で深く描かれ、あーさが好演していて印象的でした。あーさは本当に芝居上手です。

小池修一郎氏が再演する時のポイント

小池先生の作品は大作の人気作品なので、「エリザベート」をはじめ「オーシャンズ11」など再演が重ねられています。
番組では宙組「オーシャンズ11」での3回目の再演を例にあげて、小池先生に「再演する時のポイント」を訊ねていました。

再演の時は、組の特徴や生徒の個性が際立つように考えるそうです。
宙組の「オーシャンズ11」では、トップ、2番手の真風涼帆と芹香斗亜は、共に新人公演のダニー役の主演を経験して成長してきて、今回タッグを組んだということで、二人の間には今までの演者とは違う空気感があり、それを客席とも共有したい思いから「オーシャンズ10」というダニーとラスティーの銀橋でのデュエットを増やして、二人の関係性が従来のものより強調されてみえるように描かれたそうです。
それがとてもマッチして、「宙組独自のオーシャンズ11」になっていました。
この公演から「二人のバディ感」が宙組の特徴にもなりました。

小池先生は組の生徒一人ひとりを、本当に良くご覧になって把握され、さらに魅力を引き出そうとされていると思います。

この番組に元宙組の実咲凛音さんが出演されていましたが、先生の頭の中には全てが出来上がっていて、お稽古場で先生のイメージされるキャラクターに仕上がるように徹底的に指導されるそうです。
皆さん厳しい小池先生の言葉の洗礼をあびて、成長されるようです。
冒頭の下級生の望海さんに先生がかけられた言葉も、成長を願う愛情の一つだったのでしょうね。

小池修一郎氏の語る宝塚の魅力

作品の選択というのは、宝塚にあってはいろいろあるわけだけど、現在は選択肢がすごく広がっています。
昔はダメだと言われた「ルパン三世」を女性演出家がバッチリやって成功して、作品の選択の枠が見事に広がって、「ベルサイユのばら」の段階でもかなり広がっていたんだけど、もっともっと広角になったので、それがお客様が増えている理由だと思います。

その中で変わらないとするならば、生徒というか宝塚のトップさん、特に男役が一生懸命作ろうとしている自分の男役像、いろんな物語があるだろうけど、「この人が語っている言葉が、やっていることが真実である」という風に舞台の上で錯覚できる、そこまで持っていくのは大変なわけですよ。舞台の上でやっている人間像も、純粋な人が演っているし、それに向かう彼女たちというのは、本当に100%どの人も紛れもなく純粋に頑張っている、殊にスターの人たちというのは、本当にみんなスタイルは違いますが、もし蒸留したら残る物は透明なダイヤモンドのようなものですかね。

小池先生の演出の指導は厳しいと聞きますが、「宝塚の魅力」を語る先生の中に、宝塚のスターに対する大きなリスペクトを感じました。
生の女性が「男役を演じること」の大変さを誰よりも理解されながら、その要求に100%純粋にこたえようとされるスターさんたちの一生懸命さを、蒸留すれば透明なダイヤモンドが残るほどと表現されるほど尊重されているのです。
小池先生ご自身も、宝塚のスターさんに負けないくらいピュアな方だと思います。
先生の素晴らしい作品を創り上げたいというピュアな心を感じ取るからこそ、スターさんたちも100%ピュアに「血と汗と努力の結晶」の舞台を創り上げられる。
だからそこから受ける感動は、大きいのだと思います。

『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』は小池先生の夢の実現

この作品は小池先生が映画を見た直後から「演りたい」と思っていらっしゃった思い入れのある作品のようです。
バウ演出家デビュー作となった『ヴァレンチノ〜愛の彷徨〜』にも、この映画への思いがあったようです。
その後手掛けられた作品にも、この作品と交錯する作品が多くありました。

それから時を重ねて、「望海風斗という表現力の巧みな役者」と出会えたことで、複雑な権利交渉も乗り越え、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の上演の実現となったようです。
望海さんご自身も好きだった映画なので、小池先生が舞台化される機会があれば、是非出演したいと思われていたようです、

2年前の大劇場のお正月公演で上演された「ポーの一族」もぜひ宝塚で演ってみたかった小池先生の作品。
アニメと対極にある「ギャング映画」が原作ですが、隔年で夢が実現した小池先生の喜びは大きいでしょうね。

『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で新しい枠への挑戦

『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』は、「人生の皮肉や悲哀、因果」が描かれていることが、従来の宝塚的なものとは違う新しさです。
制作発表会では「人生のアイロニー」とも表現されていました。
小池先生が番組の中で、宝塚の「枠」は広がり続けていると仰っていましたが、今回この映画の舞台を上演するのも、宝塚の枠の幅を広げる新しいチャレンジですね。

“人生の苦味”を、暗黒街のギャングを主人公で描くことは、反社会的であり、“清く正しく美しく”品格を重んじる宝塚には似つかわしくないですが、それをも越えて「男役としての円熟期を迎えた望海風斗で男役の渋みとカッコ良さ、“男役の哀愁”」を魅せることは、宝塚の魅力を広げる挑戦。

“清く正しく美しく”の宝塚だからこその挑戦

昨日[BSプレミアム]で、宙組大劇場公演『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』が放送されました。
現在「嫌煙」が当たり前で、喫煙者が肩身の狭い思いをしていますが、舞台上では男役たちがタバコを片手に踊り、タバコの煙さえダンスに採り入れられていました。
以前の月組『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』では、「喫煙礼賛」に思えるようなシーンもフィナーレもありましたね。

ギャング映画を原作としての「究極の男役の美学の追求」も、宝塚だからこその挑戦で、成功に至ると思います。

1回目の観劇は、長年宝塚を観て「頭が凝り固まっている」私は、頭の柔軟さが欠けていました。年齢も年齢なので、許容範囲が狭くなってきていることを反省しました。

新しいことに挑み続けている宝塚を楽しむには、もっと頭を柔らかくして楽しまなければ。

1本ものなので、とにかく望海さんの出番が多く、望海さんの歌も申し訳ないくらい贅沢な量を歌ってくださいます。
真彩ちゃんとのデュエットの量も多く、本当に限りなく贅沢な舞台です。
宝塚史上に残る抜群な歌唱力コンビを堪能できるミュージカルは、貴重だと思います。

ただ一つ言えるのは、楽曲が難しいので、頭に残りにくいことでしょうか。
宝塚ではテーマ曲が何度も繰り返されて、帰り途には「テーマ曲」が頭に残って奏でていますが、今回は単純な私には高尚すぎたのかもしれません。

次回の観劇を楽しみにしています。

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