こんにちは、くららです。
星組全国ツアー『バレンシアの熱い花』『パッション・ダムール・アゲイン!』の配信を見ました。
3月26日、27日に梅田で観劇して以来2週間ぶりでした。
実に星組らしく熱いパッションある公演に進化していて、驚きました!
アドリブも少々入り、ご当地紹介者ではご当地の方の一言もあって、わいわい打ち解けた全国ツアーらしい雰囲気。
梅田の初日の感想で私は「今回、熱い星組に凪七さんが加わったことで、品よくまとまっていたような感じがしました。」と書いていました。なんとなく昔の「コスチュームの星組」のロイヤル感を感じていました。
しかし2週間を経て、星組らしく熱く燃えたぎる「パッションの星組」の何ものでもありませんでした!
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『バレンシアの熱い花』について
実は私は初演の大ファン
昭和のベルばらで宝塚ファンになった私は初演の『バレンシアの熱い花』の熱狂的なオタクです。
榛名由梨さんは花組で『ベルサイユのばら-アンドレとオスカル-』、『あかねさす紫の花』と安奈淳さんと一緒に大ヒットさせ、月組に戻って単独トップスターになって初主演をしたのが『バレンシアの熱い花』です。1976年でした。
フェルナンドが、榛名由梨さん。
ロドリーゴが、瀬戸内美八さん。
ラモンが、順みつきさん。
イサベラが、小松美保さん。
シルヴィアが、舞小雪さん。
マルガリータが、北原千琴さん。
男役も娘役も役者が揃っていました。柴田先生がそれぞれの個性をいかしたあてがきされた最高の配役。そして宝塚の男役を最高に格好良く魅せてくれるスペインもの。マタドール姿や「黒い天使」という黒ずくめのマント姿まで登場。
挿入歌も「瞳の中の宝石」をはじめ名曲揃い。
当時はまだLPレコードしか発売されていなかったので、写真を見ながらLPレコードを擦り切れるほど聞いていました。
『ベルサイユのばら』以上に格好良いでは無いか!と宝塚初心者の私はドはまりしていました。
「男社会」の作品
マチルドという婚約者がいるのに、イサベラを好きになって、本気で愛してしまう主演のフェルナンド。
当時高校生だった私は、この「愛の物語」の展開に何の違和感も感じませんでした。
約50年前は「男女平等」と謳われていたものの、まだまだ「男社会」でした。男性の不倫の世の中の捉え方が今ほど厳しくありませんでした。
パワハラなんて当たり前、女性は男性に養われるものという風潮があり、現代とは社会全体が違ってしました。
池田理代子さんが『ベルサイユのばら』で、典型的な男社会に生きる軍人オスカルを「男装の麗人の女性」として描かれたことには、女性の人格や能力がひとりの人間として認められていない時代に対する思いも込められていたそうです。職業面での男女の差別は明らかでした。
池田さんは、『ベルサイユのばら』を小学生の女の子向けに描いたつもりだったそうですが、仕事を持っている女性たちからの支持もとても多くてびっくりされたそうです。そして働いている女性はアンドレのような理解があって、頼れる男性を求めているということも思い知られたそうです。
『ベルサイユのばら』の熱狂的な大ヒットがあった後から、時代は「男女共同参画」という方向に進んでいきました。
今から50年近く前に男性の柴田先生が書いた「バレンシアの熱い花」、今を生きる女性が理解できなくて当たり前だと思います。
しかし宝塚は夢の世界なので、柴田先生のドラマチックな脚本マジックによって、男役と娘役の様々な愛に魅せられて、作品にはまっていきます。
「ダダダダーン」という大時代的なBGMによって、 いにしえの愛を謳う宝塚マジックの世界が展開していきます。
宝塚のもはや伝統的な作品として存在しています。
宝塚では再演ブームですが、昭和時代のものより、平成時代のものの再演が増えたのは、こういう社会の変化もからんでいると思います。
こういう昭和の伝統的な作品の今後が気になります。
2007年夏に宙組で「バレンシアの熱い花」再演
2007年夏、宙組で「大和悠河・陽月華の大劇場お披露目公演」として再演されました。
ロドリーゴとラモンは、北翔海莉さんと蘭寿とむさんの役替わりでした。
『バレンシアの熱い花』オタクの私は、大喜びで観劇に行きました。
懐かしさで満足したものの、「ちょっと違う」という印象も残りました。
初演はあてがきだったので、男役と娘役の6役がピッタリはまっていたのですが、宙組では、今ひとつそれぞれに役がはまっていなかった。
はまっていないので役替わりまでしたのだと思います。
私の中で勝手に美化されて残っているということもあったでしょう。
再演の「バレンシアの熱い花」には、少し消化不良の思いを残していました。
今回の星組の「バレンシアの熱い花」
今回の星組では6役がしっくりはまっていたと思いました。
★フェルナンド…凪七瑠海
幕が上がった時の、赤い背景に黒いシルエットで浮かびあがる凪七さんの小顔で脚長のスタイルの良さに度肝を抜かれます。黒い天使のマントを翻しての立ち回りも優雅でキレもあって、この役で今まで培ってこられた男役道の極みを魅せてくださったように思いました。星組生の学びになったことでしょう。
大人な余裕と思慮深さがあり、若き復讐に燃えて恋に悩む青年を、細かい演技で的確に演じられていて、フェルナンドにピッタリだと思いました。キスがとてもお上手なのもちょっとびっくり、大人の男性だからかな。
3役の男役の個性が違う程面白いので、大人な男性の凪七さんの存在によって、全体が引き締められこの芝居が面白くなっていたと思います。
★イサベラ…舞空瞳
長身小顔の凪七さんと並んだ時の舞空さんのスタイルも驚異的に素晴らしく輝いていて、スパニッシュの衣装の着こなしもダンスも美しく、都優奈さんが歌の幻想シーンでは、凪七さんが舞空さんをふわっと無重力なリフトをされていて、このリフトは舞空さんだからこそできるのだなと思いました。
イザベラの演技も健気でせつなくて、心情がよく伝わってきて、舞空さんの演技が私は好きです。
★ラモン…瀬央ゆりあ
「いい人」の瀬央さんが、「いい男でいい人であるがゆえにせつないラモン」を息づかせて演じられていて、ラモンか最高にはまっていました。コミカルなシーンもやりすぎず自然に笑いを誘っていました。見終わった後にラモンのせつなさが心に残りました。それだけラモンがお上手だったからだと思います。
★ロドリーゴ…極美慎
お腹から出るようになった太い声、そして向上した歌唱力。「主要な3役の一人」として全く引けを取っていませんでした。ビジュアルの良さは何を着ても似合っていて絵になり、こういう宝塚の王道的な役が特に似合います。にらみを利かせたり、表現豊かな芝居から心情がよく伝わってきました。
★シルヴィア…水乃ゆり
上品でドレス姿が美しく薄幸の美女が良くお似合いでした。梅田の時よりセリフも歌も良くなっていて、今回の役を通してお芝居に開花されたようにさえ思いました。極美さんと水乃さんの麗しコンビの組み合わせが眼福でした。
★マルガリータ…乙華菜乃
初々しくて可憐で芯の強さもあって、芝居が良くて声が綺麗で歌もお上手。ヒロインタイプの娘役さんでマルガリータがピッタリでした。
★ドンファン・カルデロ…天飛華音
天飛さんの濃い目の芝居がこの役に合っていました。芝居上手だなぁと思います。今回の公演を通して、星組における天飛さんの存在感がグーンと上がりました。
脇役も輝いている星組
★ルカノール公爵…朝水りょう
ただの悪役ではなく、色気があって格好良いイケおじのルカノール公爵でした。最高の「悪の華」を演じられたことで、“正義”を貫く主人公のフェルナンドたちがさらにいきていたように思いました。
★バルカ… 輝咲玲央
勝手にルカノール公爵は輝咲さんかな?と思っていましたが、やらしい男をやらせたら誰にも負けない輝咲さん。下衆くて酷いバルカを好演されてたことで、主要な3役の正義がさらに際立ち良い配役だったと思いました。
★セレスティーナ侯爵夫人… 紫 りら
気品があって、強さもあって、美しくて、素敵な侯爵夫人。紫さんの存在感と上手さに星組の頼もしい層の厚さを感じました。
芝居ラストの影ソロもお上手でした。
梅田で納得できなかった最後のセリフが一変!
ロドリーゴ「フェルナンド!私のシルヴィアが、死んだ!」
フェルナンド「私のイサベラも、死んだ!」
梅田で見た時は、最後の一番重要なセリフに思いがこもってないように聞こえて、「何このセリフ」と不満が残りました。家に帰って2007年の宙組版を見て、宙組の方が最後のセリフは良かったと思いました。
しかし配信で見た福岡版は、極美さんのセリフに万感の思いがこもっていて、そのセリフを受けての凪七さんのセリフも良かった!
二人のセリフのあとに、余韻が残りました。
極美さんのロドリーゴが、芝居を重ねるうちにシルヴィアへの思いが募り、「私のシルヴィアが、死んだ!」のセリフが変わっていったのだと思います。
そしてそれを受けての凪七さんの「私のイサベラも、死んだ!」も。
それ以前のシルヴィアのセリフから、シルヴィアは自死を選んだのではと私は思っています。
フェルナンド(凪七)は、「イサベラを死んだと思ってきっぱり縁を切るんだ」と、自分に言い聞かせるように発されているのではと。
私は、梅田で納得できなかった最後のセリフを福岡からの配信で納得して聞くことができて、大好きな「バレンシアの熱い花」の再演を見ることが出来た満足感でいっぱいです。
どれも見応えがあった星組の別箱、三公演の皆さんが、全員集まって今度は『1789 -バスティーユの恋人たち-』を見せてくださいます。1公演でも多く見ることが出来たら良いなと願っています。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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