『婆娑羅の玄孫』初日感想 稀惺かずと抜擢
こんにちは、くららです。
『婆娑羅の玄孫』の初日を観劇して来ました。
轟さん主演の小劇場公演にバスレは無い!

轟さんが弱きを助け強きをくじくヒーロー的な、人情味あふれる蔵之介を好演されていました。
そして汝鳥伶さんと星組生たちの大熱演も加わった素晴らしい舞台でした。
「日本舞踊」と「大立ち回り」も素晴らしく、轟さんが真ん中にいらっしゃるだけで、舞台の質がう~んと上がる轟マジックは、今回も光っていました。

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ストーリーについて

轟さんで始まり、轟さんで終わる
幕開きは、深編傘に着流しの轟さんから始まります。
和風の轟さん版“マイ・ウェイ”、主題歌「轟く我が心」、とても力強い歌声でした。
明るい清々しい笑顔の轟さんに、キュンとなりました。
お芝居の冒頭で、こんな笑顔を見せて下さることは、今まで無かったように思います。

2幕の終わりも、轟さんが「轟く我が心」を歌って幕となります。
この時は、涙が光っていて、こみ上げてくる思いをかみしめるように万感の思いをこめて歌われていました。こちらもジ~ンとなります。

細石蔵之介の苗字は、「さざれいし」と読むことを知りませんでした。
この名前は、長屋で生きるための俗称で、実は大名の佐々木家の次男の高久

長屋では、「石さん」と、宝塚での愛称そのままに呼ばれて、みんなにとても慕われている光景は、現実とリンクしてリアリティがありました。

衣装と鬘について
蔵之介の着流しが派手なので、「大衆演劇のよう」と私は表現していましたが、『婆娑羅』の血筋をひくので、派手な着物をおしゃれに着ていたようです。ポスターの衣装だけでなく、他にも派手目な着物をいろいろと着こなされていました。

浪人風の、ボサボサに月代(頭の真ん中を剃る)を伸ばしたザンバラ髪は、「ムシリの鬘」と言うそうです。
宝塚では、こういう鬘をなかなかつけませんが、端正な顔立ちの轟さんには、この髪型さえ似合っていました。

物語が進んで最後は青天の鬘に裃従来の武士の姿で登場されますが、やはりこちらの方が数倍カッコ良い!
宝塚の正統的な武士姿を最後に見ることが出来て嬉しかったです!

ストーリー展開について
1幕は清国の姉弟(小桜・稀惺)の敵討ちを中心に、
2幕は蔵之介の出自にまつわって、物語が繰り広げられていき、意外な結末と別れになります。

「1部は徹底的に笑ってもらって。2部は徹底的に泣いてもらって。」と植田先生が説明されていましたが、笑いと涙が、1部と2部で分けられていたわけではありません。2部でも笑いの場面はいっぱいありました。
2部の涙は「別れ」の涙です。

「別れ」は、「死」ではありません。
新天地への旅たちです。
ここも「轟さんの退団」という現実とリンクしていて、舞台の上で、出演者たちが今までの感謝を伝えるシーンがあるのですが、みんな涙をこらえながら演じていました。
観客側も「轟さんとの別れ」に、涙されている方も多かったです。

「人生は舞台だ、芝居だ!」

「明日は行くものではなく来るもの。やって来た日々を正しく生きるしかない」

心に残るセリフも多くありました。植田先生が、これでもかという程詰め込まれていました。

すばらしかった日本舞踊

1幕「神田祭」

江戸っ子たちの夏祭り
鳶頭A…天華えま、極美慎
鳶頭…ひろ香祐、紘希柚葉
芸者…紫りら、澪乃桜季、瑠璃花夏、乙華菜乃
芸者の歌手…夢妃杏瑠

蔵之介とお鈴の舞
轟さんと音波さんの息のあった、お面をつけた踊りでした。(かっぽれ)
初日は轟さんのお面のひもがとれてしまうハプニングもありましたが、落ち着いて対処されていました。

2幕「桜狩り」

満開の桜のもと轟さんが山神に扮して、国土安寧、悪霊退散の祈りを込めて優雅に舞われました。
元禄男
ひろ香祐、天華えま、咲城 けい、紘希柚葉
元禄女
夢妃杏瑠、澪乃桜季、瑠璃花夏、乙華菜乃

星組生は日本舞踊を披露する機会が今まであまり無かったと思いますが、とても揃って上手でした。
轟さんが色々とアドバイスをされているのでしょう。

迫力の大立ち回り

轟さんの立ち回りには、殺陣の全ての“手”が入れられているとか。
本当に格好良かったです。剣の達人です。
蔵之介の味方側の汝鳥さん、美稀さん、天華さんは、「忍びの男」との殺陣がありました。

106期生の娘役さんまで「忍びの男」に扮して轟さんと殺陣をして斬られていました。15名です。
全く違和感が無かったので、とても練習に励まれたのでしょう。

極美さんだけ「瓦版売り」の出番があるため、殺陣に入っていませんでした。

ヒロインはいた!音波みのりさん

音波みのりさん演じるお鈴は、轟さんの相手役でした。
元気で活発でおきゃんな江戸っ子のお鈴。
遠慮のない口喧嘩をするほど仲の良い二人の、恋愛部分もしっかり描かれていました。

七夕の夜、蔵之介に変化があることを察していたお鈴は、短冊を八幡様に納めに行こうと誘います。
蔵之介は「お鈴、世話になった」と突然口にして。

満点の星空の下で、とてもきれいなメロディーの「七夕の歌」を二人が歌うのですが、別れを前に、とてもせつなく、いじらしい、ロマンチックな光景でした。

そして、最後に長屋の人たちが蔵之介にお礼を言いにいく時に、お鈴は一緒に行きませんでしたが、その後お鈴の声が…

見た目は活発だけれど、人一倍繊細で、相手の心を思っていじらしい、可愛いお鈴でした。

汝鳥伶さん演じる小久保彦左は、蔵之介が「爺」と慕う深い関係で、二人の掛け合いも見せ場でした。
汝鳥さんは、ご自分が轟さんの相手役と仰っていましたが、それまでのお二人の深い関係性を思ったら、そうなのかもしれません。
汝鳥さんの怪演も素晴らしかったです。

路線男役さんたち

星組5番手の天華えま (98期)くんと6番手の極美慎(100期) くんが出演しています。
今回二人の役は、全く違います。

出番と見せ場が多いという点では、瓦版屋の極美慎くんです。
ソロ歌唱も2曲ぐらいあって、「てーへんだ!」と江戸弁の言葉が板についていて、場面が変わるごとに登場してきます。
明るく軽い芸風がとても合っていて、キラキラと輝きもあります。

天華えまくんは、1幕ではひとくせある旗本、2幕では佐々木家の忠実な家臣西川頼母の二役を演じていました。
西川頼母は、轟さんの幼馴染で親友設定です。
「動」の極美慎くんの役に比べて、「静」の辛抱役。
「静」の役もとっても重要で、西川頼母たちの説得があったからこそ、蔵之介の心は動いていきました。

轟さん中心の舞台で、どちらが上とか下とかの番手の意味合いは無いと思います。
極美慎くんの役の方が、目立つ儲け役であったことは確かでしょう。

「神田祭り」の日本舞踊のシーンでは、二人が鳶頭Aでした。

轟さんの最後の舞台に出演できたことは、二人とも恵まれていると思います。

稀惺かずとくん抜擢!

そんなに騒がれていませんが、105期の稀惺かずとくんは大抜擢だと思いました!

106期の華世京くんは、「ほんものの魔法使」で、プログラムにスチール写真が掲載されましたが、稀惺かずとくんはまだです。
華世京くんのように、いきなり3番手という形ではありませんが、宝塚を去って行かれる轟悠さんとの役の上での関りにおいては、とても意味のある役どころでした。

1幕は、長崎から江戸に敵討ちをするためやってきた清国の姉弟(小桜・稀惺)の敵討ちを中心に話が展開していきます。ふたりは流ちょうに中国語を話し、日本語は少しあやしい。

姉の麗々を演じる小桜ほのかちゃん真々を演じる稀惺かずとくんは、ほとんど同じ出番です。
セリフや、見せ場は、真々の方が多いぐらいです。

蔵之介から、厳しく剣道の指導を受けるのは、真々です。
途中真々が弱音を吐くと、蔵之介から「仇が憎ければ剣を磨くしかない」と諭されます。

踊り子たちの一座に混じって、姉弟は激しく勇壮に獅子を踊りながら、仇敵に近づいていきます。
そして蔵之介が立会人となって仇討ちを果たしました。

一生懸命に演じている熱意が伝わってきましたが、初日は歌いだしの声が弱かったり、獅子舞の時に足が滑ったりもありました。これから良くなっていくと思います。

2幕は最後の別れのシーンに、姉弟は登場します。
その時に、轟さんは真々演じる稀惺くんに向かって、「頑張れよ。立派になれよ。」とメッセージを送っていました。

その前に女の子で一人だけ寺子屋に通っていた瑠璃花夏ちゃん演じるお蝶にも、「頑張れよ」という言葉をかけていましたが、稀惺くんに対しては、とても長かったように記憶しています。

轟さんは、公演前のインタビューで、「感傷に浸るより、むしろ私が学んできたものを、下級生に伝えていきたい」と、後輩への思いを語られていました。

脚本・演出の植田先生が、稀惺くんを選んだだけで、何も稀惺くんの今後に対しての計画は無いのかもしれません。

私の思いを書かせていただくなら、宝塚を愛している人たちはみんな、その創設者である小林一三翁に感謝していると思います。
小林一三翁の玄孫稀惺くんの宝塚での活躍を期待したいです。

成長を見守るのも、宝塚の楽しみ方の一つですが、稀惺くんがどんな男役さんに成長していくかも、楽しみです。

他の若手抜擢者について
魚屋の父息子
・父…長太  ひろ香 祐
・息子…長松 紘希柚葉(103期)

仕立て屋の母娘
・母…お花 紫 りら
・娘…お蝶 瑠璃花夏(103期)

103期の紘希柚葉くん瑠璃花夏ちゃんが、「子役」として、セリフも出番も多く活躍していました。
二人は日本舞踊でも、抜擢されています。
瑠璃花夏ちゃんは、今回のような男勝りなパンチのある役が持ち味がいきますね。以前にも書いたことがありますが、新感覚の娘役さんと言う感じです。

轟さんの小劇場最後の舞台の初日ということで、カーテンコールが4回ありました。
しかし、最後の舞台であっても、轟さんのご挨拶は通常モードで、笑顔で短いご挨拶を繰り返されるだけでした。
ご挨拶で目立つことをされない轟さん。最高の舞台を届けることに専念されているからでしょう。
ブレない轟さんの美学を感じました。

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