こんにちは、くららです。
『冬霞の巴里』の初日を観劇しました。
ギリシア悲劇『オレステイア』をモチーフにした復讐がテーマの作品と言うことで、いろいろと想像していましたが、思っていたものとは全然違いました。
2幕からグイグイと話に惹きこまれていき、息を吞むストーリー展開が面白かったです。
様々な伏線が張られてからみあっていますが、見事に回収されて、最後はとっても余韻を残して終わりました。
ドラマ創作の指田珠子先生の手腕はスゴイです。
そして、前向きに生きるための課題を投げかけてもらったようにも思いました。
ストーリーを楽しむ作品だと思うので、ネタバレしないように書きます。
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指田先生の独特な世界観
メイクが独特
朝に公開されたスチール写真では、聖乃くんが精悍で男らしいなと思ったぐらいでしたが、公演プログラムのスチールを見るとドッキリ。
下宿の女将の美風舞良さんのスチールのアイメイクがパンダのような異様さでした。
実際に舞台ではそれ以上。宝塚では見たことがないものでした。
上流貴族は普段通りのメイクですが、下宿の住民たち庶民は、目の周りが殴られたようなアングラのようなメイク。ゾンビメイクに近いような。
そして庶民の衣装は汚くてボロボロ。
産業発達して、華やかな人々と貧しい人々の貧富の差が明確になった時代なので、その対比がメイクと衣装であらわされているようです。
開幕一番は、復讐の女神の3人からはじまります。
復讐の女神(エリーニュス)は、白塗りのピエロ風で、黒天使のさらに怖いバージョンメイクで、衣装も血がとんでいるような感じで、わけのわからない怖さでまずビックリ。
タイトルの“Fantasmagorie”には、幽霊ショーという意味があるそうですが、3人のエリーニュスがそれを表現しているよう。
咲乃深音さん、芹尚英さん、三空凜花さんの3人。咲乃さんは歌上手なので歌も歌われていました。
宝塚ではなかなか見ない前衛的な雰囲気なので、衝撃というか新鮮というか、「何を見せてくれるの?」という不思議な感覚で始まりましたが、だんだんと慣れてきて、エリーニュスの存在は良いアクセントになっていました。
1幕より2幕に入ってからが断然面白かったです。
衣装やセットも独特
ポスターには、銃弾のような跡が描かれていたことから、物騒なイメージがわきました。
それと同じように、衣装やセットも、見る側が血をイメージしたり、鎖をイメージしたりするような衣装やセットでした。
指田先生は、観る側の想像力を掻き立てること、イメージをとても大切にされている印象をもちました。
見たい永久輝せあが全部見れる!
永久輝せあくんの1幕の開演アナウンスは、とっても暗〜い重い感じでした。2幕はそうでもありませんでした。
アナウンスの声だけで、あのジットリとした暗さが表現できるのはスゴイです。
永久輝の秘めたる凶暴性
昨年から復讐に燃える人たちばかりを演じています。
・『アウグストゥスー尊厳ある者ー』ブルートゥス。
・『元禄バロックロック』のクラノスケ。
・そして今回のオクターヴ。
公演プログラムに、「永久輝の秘めたる凶暴性を見たくてなりません」と指田先生が書かれていました。
指田先生のその期待にこたえて、秘めたる凶暴性をたくさん見せてくれました。
「怒り」「憎しみ」「苦しみ」「恨み」「睨み」「冷酷」「絶望」「闇」「鋭さ」…
鋭い三白眼が、それらの表現に効きます。
そして壊れてしまいそうな、はかなさもあって、その二面性も魅力です。
姉のアンブル(星空美咲)の横で抱き寄せてもらって恍惚としている様も絵になっていました。
「永久輝の秘めたる凶暴性」は、これからも更に追求されていきそう。
美しさも最高
ポスターが公表された時に、憂いを帯びた永久輝せあさんが格好良すぎる、素敵すぎると話題になりました。
舞台のひとこちゃんは、ポスターと同じ髪形と衣装でした。
前髪はアシンメトリーで片側だけボブのように長くなっていて、その髪形が美しいお顔をさらに際立たせています。
公演プログラムの裏表紙とその前2枚の写真も、キリッとした端正なゾクゾクする美しさでした。
舞台の上のひとこちゃんは、さらにさらに美しかったです。
耽美という言葉は、永久輝せあのためにあるよう。
主な出演者たち
アンブル【オクターヴの姉】…星空美咲(105期)
永久輝さんと8学年差がありますが、姉と弟という設定が全く自然で、弟に対する包容力とやさしさにあふれ、どこか落ち着いていて強さも感じられます。
元雪組トップ娘役の咲妃みゆさんのような芝居巧者タイプだなと、美咲ちゃんを観るたびに思います。
声が綺麗で歌も素晴らしく、歌手設定なので歌手としても聞かせてくれました。
フィナーレのデュエットダンスもキレが良く、これだけなんでも出来たら抜擢され続けるのも当然だなと思います。
新人公演のヒロインは経験していませんが、本公演のヒロインをいつでも演じることができるレベルだと思います。105期の優秀な娘役さんたちの中でも群を抜いています。
『巡礼の年』の新人公演では、初ヒロインでしょうか。
オクターヴ(永久輝)とアンブル(星空)に血のつながりはない
主演とヒロインが弟と姉と言う関係なので、「近親関係は嫌」という声をTwitterで目にしました。
このあたりのことは、ちゃんと考えられていました。
ヴァランタン…聖乃あすか
スチール写真で精悍で格好良いと思っていたら、舞台では側頭部を刈り上げ、眉毛を切断して、とっても猛々しくて、一皮むけた漢になっていました。
眼光が鋭く、すごい気迫があって、影のある一癖も二癖もあるあくの強い役を好演されていました。
「謎の男はこれで終わり?」と物足りなく思っていたら、その後ドカーンと見せ場がありました。
この役にチャレンジしたことで、今後の聖乃あすかに変化が起きそうな予感。
エルミーヌ……愛蘭みこ(104期)
今回はヒロインの美咲ちゃんが演じるアンブルは、主演の永久輝くんの姉役なので、宝塚のヒロインらしい役というとエルミーヌになります。
声が綺麗で歌えて可憐で、ヒロイン力が高いなと思いました。またまた有望娘役さんの出現!
復讐劇の中で清涼剤的な役割を担っていて、可憐に爽やかさを添えています。
『元禄バロックロック』の新人公演で音くり寿ちゃんのツナヨシ役を演って脚光を浴びましたが、これからも抜擢されていきそう。
少年オクターヴの初音夢ちゃん、少女アンブルの湖春ひめ花ちゃんも可愛いピュアな演技が良かったです。
声が綺麗で歌えるというのが、若手娘役さんの必須事項になりつつあるように思います。
ミッシェル【オクターヴの義理の弟】…希波らいと
エルミーヌはミッシェルの婚約者という設定でしたが、エルミーヌの愛蘭みこちゃんの方がオクターヴと関わっていくので、出番が多くて、らいと君の出番が少ないなと思っていたら、ラスト近くにソロナンバーがありました。やはり花組の若手ホープさん。
初日だったためか、歌はもう少し慣れる必要があるようでした。
クロエ【オクターヴの母】…紫門 ゆりや
初の女役だそうですが、はじめてとは思えないほど美しくて、デコルテが綺麗で、娘役さんにしか見えません。
フィナーレも娘役群舞のセンターで素敵にボブで脚の出るドレスで踊っていらして、「ずっと娘役しています」という感じでした。
ギョーム【オクターヴの叔父】…飛龍つかさ
髭ともみあげをつけたイケおじがお似合いでした。
難しい役どころだったと思いますが、とって上手に演じられていました。
少しだけソロナンバーがあって、抜群にお上手で流石でした。
その他にも個性的な登場人物がたくさんで、みなさん良い味を出されていました。
専科の一樹千尋さん演じるジャコブ爺の存在はやはり特別でした。
フィナーレも素敵!
『龍の宮物語』の時は物語の世界観がフィナーレの明るさでぶち壊されてしまったような残念さがありました。
今回は本編の余韻を残したまま、シックで落ち着いた格好良いフィナーレでした。
ただ化粧替えの時間など無いので、お芝居のメークのまま踊られているので、顔を見てドキッとしてしまう方がチラホラ。
「タンゴ」で、聖乃さんから始まって、男役さん群舞、娘役さん群舞、男役娘役入り乱れて等、いろんな人たちが絡んで踊っていました。
目がいくつあっても全然足りません。
永久輝×星空 のデュエットダンスもありました。
その後、永久輝 聖乃 飛龍 希波 侑輝 5人のダンス。
(侑輝大弥くんだけ新人公演の主演をしていないので、今度巡ってくると確信しました。お芝居でも活躍されていました。)
「永久、聖乃、飛龍の3人」、「永久輝、聖乃の2人」となって。
最後は永久輝さんの長めのソロダンスでした。
オクターヴの思いをこめているような、激しめのダンスで、とっても素敵でした。やはりダンサーです。花組でますます実力をつけたよう。
終わりに
復讐を徹底的に描く作品だと思っていましたが、そうではありませんでした。
復讐は自分を不幸に追い込んでいくだけで、決して幸せにならない。
物事は立場が違えば、受け止め方が全く変わる。etc
いろいろなことを考えさせられました。
カーテンコールで永久輝さんが
「この作品が誰かの思いを変えることにつなげていけたら」と仰っていました。
ちょっと哲学的な、心に響いてくる作品でした。見る人によって、心に響いてくることは、それぞれでしょう。
指田先生の作品はとっても深いです。
4月2日(土)16:00公演[千秋楽]ライブ配信が予定されています。宝塚にはこういう作品もあるんだと、新しい発見があるかもしれません。
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