星組『龍の宮物語』感想こんにちは、くららです。
昨日観劇した星組『龍の宮物語』の感想を書きます。
妖しく美しく哀しくて切ない、不思議な世界観のファンタジー作品でした。
まだ始まったばかりなのでネタバレしないように気をつけます。

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礼真琴くん率いる『ロックオペラモーツァルト』が、歌とダンスが堪能できる作品とすれば、こちらは芝居を深く堪能できる作品。
どちらも甲乙つけがたいほどの適材適所の活躍が観れる傑作!こう書けば『龍の宮物語』の素晴らしさが伝わるでしょうか。
主演の瀬央ゆりあ君にぴったりのはまり役で、代表作になるのでは無いかと思います。
星組の芝居巧者トリオ・瀬央ゆりあ、有沙瞳、天寿光希が十二分に活かされた、「作・演出/指田 珠子(しゅこ)先生」の只者では無い手腕が発揮された感動作品です。(「ドクトル・ジバゴ」「鎌足」では、3人とも名演でした。その3回目の名演技作とも言えます。)

指田珠子先生について

指田珠子先生のデビュー作品です。
月組「All for One」、雪組「ひかりふる路」 星組 「ANOTHER WORLD」 花組「CASANOVA」と新人公演の担当をされてきました。

明治浪漫 音楽奇譚「龍の宮物語」という「タイトル」とクラシカルでレトロでいて新鮮な「ポスター」から受け取るイメージだけで、「観たい」思いが湧きたつものでした。
「青年と龍神の姫の愛憎織り成す異郷訪問譚」の舞台は、幻想的な幽玄の世界観を堪能させてくれました。

指田珠子先生は、女性ならではの「美的感覚」と「繊細な感性」に優れた先生だと思います。
ポスター撮影の時に、「先生から構成や明確なビジョンを伝えてもらっていたので、それにどう近づけられるかと思いながら撮影し、やりやすかった」とせおっちが語っていました。
デビュー作は渾身の作だと思うので、練りぬいて作り上げられていると思います。
肩に力が入りすぎて、詰め込み過ぎになることが多いですが、1本筋の通ったものがあって、明確なビジョンがぶれていないのが良かったと思います。

布を使った”水”の表現をはじめ、「布」が様々な表現の一つにとりいれられたりして、わかりやすいシーン展開になっていました。
主な配役の人たちの衣装のセンスも独特で素敵でした。龍神の中心二人(火照・火遠理)は、ビジュアル系バンド風テイストで意表を突くところも。
妖し気な音楽等も、独特の世界観をつくりあげていました。

この作品は、メッセージ性がある作品というより、この物語の世界観に浸って、それぞれの感性でこの作品を受け止め、味わうもののように感じました。
2回目を観ると、また受け止め方が違うように思います。
見終わった後に、とても余韻が残り、それを味わいたい思いもありました。

しかし「宝塚」なので、再び幕が上がると、それまでをぶち切ってフィナーレが始まりました。
目の前にカッコ良い男役さん、娘役さんがあらわれると、気持ちを切り替えて、フィナーレを楽しみます。

そして最後のパレードは、またお芝居の衣装に戻りました。

宝塚の作品なので、フィナーレが喜ばれるから、そういう構成になり、私も喜んで観ています。
しかし本当に作品を味わうなら、フィナーレ無しで終わった方が良いのでしょう。

期待の女性演出家

女性演出家というと、現在一番人気は、上田久美子先生。
上田先生のストーリーの面白さに感情ドラマを重ねてくる作風に対して、指田先生はイメージを膨らませて感性に訴えてくる作風で、全く違うように感じました。

主に女性が観る宝塚なので、女性ならではの視点と感性から描く、女性演出家の先生のならではの作品が、私は好きです。
指田先生が新しく加わってくださって、これからの女性演出家の作品に益々期待しています。

今回、上田久美子先生の鮮烈なデビュー作品『月雲の皇子』に感じたような衝撃を感じました。
(丁寧な脚本だったと思いますが、上田久美子先生のような100点満点の完成度では無かったような。それは当たり前でもあります。)

たった10日余りで終えてしまうには勿体ない作品です。『月雲の皇子』のように東上のチャンスに恵まれれば…と思います。

主演 清彦…瀬央ゆりあ

座付きの先生なので、「瀬央ゆりあ」の魅力を知りつくされ、さらにプラスアルファを引き出そうとされていて、とことん「瀬央ゆりあ」の魅力に圧倒されました。

真面目に誠実に生きていた青年像が、透明感があって爽やかで明るいせおっちのキャラクターにピッタリでした。
鼻筋の通ったキレイな顔立ちと長身のスタイルの良さが、白い着物に袴の書生姿が良く似合っていて、絵にかいたような「好青年」。
その好青年がいろいろと巻き込まれていくのですが、感性豊かで繊細な演技力によって、グイグイと一緒に渦中にまきこまれていく思いでした。

人柄がにじみ出ている芝居には、とても惹かれるものがあります。
声が少し高いけれど、歌い声がきれいで聴き惚れます。歌唱力も作品ごとに安定してきています。
ダンスは少し苦手なのかな?と思っていましたが、フィナーレではしっかり真ん中で激しいダンスを踊って魅せてくれました。
3拍子そろった実力者に成長されたことを確かに感じました。

ヒロイン玉姫…有沙 瞳

出番が多く、玉姫の物語といっても良いほどのインパクトのある役です。 
執念を抱いた美貌のヒロインを、おそろしいほどの迫力で演じる姿に圧倒されました。
普通の娘役には演じることのできない、スゴイ技量の必要な役だったと思いますが、見事に表現し演じ、歌唱力も抜群で、それまで蓄えてきた実力と美しさが発揮されていました。
ミステリアスで、内に秘めた情念を抱いた玉姫をここまで力強く演じることのできる娘役は、他にいないでしょう。娘役の域ではありません。
プログラムに指田先生が「ヒロインの有沙瞳は、言葉の僅かなニュアンスの違いも汲み取り表現できる繊細さと大胆さを持つ貴重な役者です」と記されていましたが、正にそう。 
有沙瞳の並外れた実力の高さを実感しました。

フィナーレの最後に、せおっちとくらっちのデュエットダンスがあります。玉姫はお芝居の間は、ほとんど仏頂面というか鉄仮面で最後のシーンを除いて笑顔が無いのですが、デュエダンでは二人とも笑顔炸裂で、こちらまで幸せになります。こんなに笑顔のこぼれるデュエダンは中々ありません。回転リフトもありました。
先ほど、「フィナーレ」でお芝居の余韻が消される、と書きましたが、宝塚ファンには「フィナーレ」は、無くてはならないものですね。

この公演がくらっちの餞別にならないようにと願うばかりです。
素晴らしい実力が本公演でも発揮されますように。

龍神・火照…天寿 光希

神としての威厳に説得力があり、貫禄が凄くて、芝居の巧みさにすいつけられました。
玉姫への一途であって、歪んだ愛に迫力があり、みっきーさんとせおっちの対峙場面は、見ごたえありました。上級生の存在感は素晴らしい。

山彦…天華 えま

山彦の存在が、話が進むにつれてわかっていきます。新人公演の主演を3回経験しているので、やはりお芝居が上手で、存在感が際立っていました。
前回の外箱公演ではディナーショー組で、全国ツアーにも「鎌足」組にも入っていませんでした。
お芝居では2番手の位置だと思いますが、階段降りでは、天寿光希さんの方が後でした。山彦は重要な役どころで出番も多かったのに、少し残念な思いが。

龍神の弟火遠理…天飛華音

今までは元気の良い少年役が多かったですが、今回は抑えた、クールな思慮深い役でした。
お芝居ではいつものハツラツさはありませんでしたが、フィナーレのダンスナンバーでとてもはりきっていました。

ダンスシーンは、天寿光希さん、天華えま君、天飛華音くんが並んでいて、天飛華音くんの出世ぶりにびっくり。初スチールも。
せおっちを交えて4人で踊るシーンもありました。

日刊宝塚の写真は、天華えま君は無しで、天飛華音くんのものは掲載されていました。

98期の天華えまくんより、102期の天飛華音くんの方が優遇されていくのか?
天飛華音くんは新人公演主演を1回経験しただけですが、今後は100期以降の方が路線にくいこんでくるのか?という気配を少しだけ感じました。

102期の笹丸の澄華あまねちゃんが、目を引きました。龍神チームで一人だけ娘役さんの演じる少年役、声も少年ぽい声で、正義感をもっている役で、良い芝居でした。

長期に休演していた拓斗れいさんのお元気な姿が拝見できて嬉しかったです。

客席おりについて

両サイドに客席おりの階段があるので、バウホールならではの「客席おり」を期待しましたが、下手の階段が一度使われただけでした。
一幕ラスト、苦悩のせおっちが下手通路を通ります。苦悩の顔でも横顔が美しい!

カーテンコールも通常のご挨拶1回だけでした。
私の観た回は、紅さん、綺咲さんはじめ、「モーツァルト」組が沢山ご観劇でしたが、何も触れませんでした。

昨日は、せおっちの「ファーストフォトブック」の発売日でした。
スカイステージの「ファーストフォトブックLABO#10「瀬央ゆりあ」」で、せおっちの魅力の詰まったフォトブであることはわかっていましたが、表紙からの見開きからもうせおっちの魅力満載!夢乃聖夏さんとの対談を通して、「瀬央ゆりあ」がより深く理解できて、ますます応援したくなりました。

公演の取材記事で、新生星組について
「『支える』を一番に考えない。技術を向上させて、舞台上でそれぞれが輝いてこそステキな組になるのでは」とこたえていました。
「同期を支える」という意識では、時に受け身になってしまいます。
スターは、前に出ようと押し出して輝いてこそ。
せおっちのこの言葉を読んで、これからさらにスターとして光り輝いていくだろうと確信しました。

この勢いでいくと、トップスターということもあるかも、と思った公演でもありました。

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