月組『出島小宇宙戦争』感想
こんにちは、くららです。
月組『出島小宇宙戦争』を観劇して来ました。
巷では大好評のようですが、若くない私にはそうでは無い部分もありました。
もちろん鳳月杏さんの主演公演としては最高でした。

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頭のかたい私にはいま一歩の部分も!

「地球から宇宙の正反対、よく似た星の良く似た国で、よく似た歴史を紡いできた人々が、パラレルワールドの出島で繰り広げる世界」という解説があって、なぜ別世界のパラレルワールドなのか?が理解できませんでした。

歴史にのっとった登場人物を題材にしていて、そのように歴史も刻まれていて、興味がそこに寄せられているのに、もう一つの地球によく似た星が舞台とは何なの?
古い人間の私は、このあたりに違和感を感じてしまいました。若い方はそうでもないのかも?

でも、真ん中を「確かな役者・鳳月杏」が務めていたので、「トンチキ」でも、かろうじて置いてきぼりにされることなくついていけました。
花組から一回りも二回りも大きくなって帰ってきたちなつさん。
完成した男役の魅力にあふれている鳳月杏の存在感はスゴイ!と思いました。
一風変わった衣装も鬘も着こなし、魅せてくれる男役度!

これが若手が真ん中で演じる舞台だったら、「おばちゃんついていけない!」で終わっていたでしょう。

鳳月杏さんの魅力

ちなつさんの「月組→花組→月組」という経験は、、ちなつさんの実力の上に、さらに大きな実を結んでいます。
組戻り、別箱1作目『オンザタウン』でも大劇場1作目『I AM FROM AUSTRIA』でも、その役者としての存在感が抜群で、脇役ながら主役をくうほどでした。

今回、2番手リンゾウ(暁千星 98期)、3番手シーボルト(風間柚乃、100期)、ヒロイン遊女タキ(海乃美月、97期)という中堅を相手に、男役14年目の2回の組替を経て蓄積された92期のいぶし銀のような実力は、余すところなく披露されていました。

谷貴矢先生の脚本での人物像の書き込みは、演者にゆだねるような部分がありますが、それをちなつさんと風間柚乃くんは、芝居力と勘の良さで十二分に自分で作り込んで埋めていました。ヒロイン経験値の長い海乃美月ちゃんも。

暁千星くんについて

暁千星くんは、スター性はバッチリで登場するだけで舞台上が華やぎますが、今までとはタイプの違う「腹に一物を抱える隠密役」に果敢にチャレンジ中といった感じでした。
カゲヤスとは幼馴染でみで。ありちゃんの方が「兄弟子」という6年の学年差を越える設定は少々無理がありますが、最後には二人が対峙するところは見応えがありました。

「ナウオン」や「終演後の突撃レポート」を見ても、ちなつさんに見守られながら、芝居力を育てられている感じがしました。
「ナウオン」でちなつさんが、「この作品はありちゃん次第」と言っていました。ありちゃんは責任重大!
2期下のおだちんが「本格的な演技派」なので、ありちゃんも奮闘して、芝居力がメキメキと鍛えられていました。

風間柚乃くんについて

シーボルトのおだちんの芝居力は、天性のものなのでしょうね。宇宙人風につけ耳をつけて、皆とは毛色の違う役を熱演、怪演していました。
おだちんは若い格好をしていても、若く見えない、年齢不詳な重厚さがあるのがスゴイところ。

シーボルトチーム
蘭世惠翔ちゃん メイド服がとても似合ってお人形のような可愛さでした。娘役に転向して正解でしたね。
シーベルトに献身的に仕えるキャラクターがはまっていました。
日本刀を使いこなせるのは流石元男役。
群舞で踊っていても、キュートさが目を惹きます。

彩音星凪くん
美形のお顔立ちがひと際目立っていました。
そして3の線の抜けた感じは、普段そのままなのかな。
スカイステージの番組での「ありちゃん一筋」のファン度が、同じありちゃんファンとしては、親近感がもてます。

海乃美月ちゃん

今回の役はヒロインというより、ヒロイン風。
この役は、とても難しい役なので、様々なヒロインの経験値のある海ちゃんに合っていたと思います。若い娘役さんには難しいでしょう。とても好演していて印象的でした。

別箱では多くのヒロインをこなしてきた海ちゃん。
ドラマシティで、とても若い時の海ちゃんヒロインを見たなぁと思って調べてみたら、2014年夏の『THE KINGDOM』(日本青年館・シアタードラマシティ)美弥るりか、凪七瑠海ダブル主演で、早乙女わかばとうみちゃんの東上ダブルヒロイン。
なんと7年前になります。その頃は法令線が気になっていたので、現在見た目ではそれほど老けた感じはしませんが、前回の「オンザタウン」では、肉布団をまいたさえない女の子を演じていました。
昨年怪我をされてショーでの休演が心配されましたが、「オンザタウン」からダンスも復活され、今回ちなつさんとのデュエットで大胆な難易度の高いリフトを魅せてくれとても美しく素敵でした。なんとなく娘役の集大成として飾られているような予感が…

その他気になる配役

幕府側の役人ヌイノスケの英かおと(99期)
歌舞伎メイクに黒メガネ。新人公演の主演を経験してから、一皮むけてきたように思います。
小顔で長身で、ダンスも歌もお上手で、芝居も面白い。
100期あたりに「歌える男役」さんが少ないので、今後さらに活躍していくでしょう。

若かりしカゲヤスの蘭 尚樹(100期)100期の首席なので、とても落ち着いていて、お芝居も上手でした。

若かりしリンゾウの柊木 絢斗(102期)ありちゃんの「ブリリアントドリームズ」に出演しているのを見て、名前を覚えましたが、早速ありちゃんの「若かりし」役で活躍していて嬉しかったです。

菜々野あり&詩ちづるちゃんにうさぎ風の、可愛いフリフリドレス
水色の詩ちづるちゃん(105期)が、しっかり可愛いかったです。今後の活躍に期待

見事なフィナーレ

・海ちゃん中心の華やかな娘役群舞からはじまります。

・ちなつさんと海ちゃんのデュエットダンス。曲は『Moon River』
(デュエットダンスは、最後という概念があるので、早々に始まってビックリ)
大人っぽい二人の、ドキドキ、どっきりのアダルトなデュエダンでした。

・ちなつさん中心の男役の燕尾服の群舞 男っぽく迫力あります。
鳳月杏・暁千星・風間柚乃の3人のダンス。

・最後はちなつさんが一人でしっとり歌い上げて、「鳳月杏主演だなぁ」と感動。

谷貴矢先生の作風

『アイラブアインシュタイン』(2016年花組)、『義経妖狐夢幻桜』(2018年雪組)とバウホール作品を2回経験されていて、今回初の別箱公演で3回目です。
どの作品もSF系歴史ファンタジー。幻想的で独特の世界観を創っておられますが、創り側の一人よがりな面は否めません。小劇場なのでタカラジェンヌの力で楽しめる舞台になっていますが、これが大劇場だとトンチキ作品になってしまいそう。
装置や音楽や衣装などは素敵なので、イメージ力をいかして「大劇場のショー作品」を目指された方が良いのでは?と勝手に感じています。

ちなつさんの実力を十二分に活かせていたか?

ちなつさんが主演ということで、素晴らしい男役を魅せてくれる舞台に仕上がっていましたが、ちなつさんの実力は十二分に活かせきれていなかったとも思いました。
ちなつさんは今まで漏れなく「色濃い役」を演じて来られました。
今回のカゲヤスは、とてもピュアで、ものごとを真っ直ぐ見る白い役なので、ちなつさんには「役不足」のように思え、もっともっとちなつさんの実力の発揮させ所があったのでは?と思うのです。

「ビバ!タカラジェンヌ」でのちなつさんの話

『I AM FROM AUSTRIA』を大劇場で上演中に「ビバ!タカラジェンヌ」というラジオ番組に出演した時に、

「コメディのテンポにこだわりはじめたので、コメディを極めていきたい」
「本格的にダンスを踊りたい」

と、二つのことを仰っていました。
後者は、素晴らしいフィナーレで実現していました。

しかし、前者については、コメディではありませんでした。
『出島小宇宙戦争』不思議な世界観のタイトル。
タイトルだけで、ワクワクと興味がそそられ、「コメディだな」と勝手に予想していましたが、そうではありませんでした。

『I AM FROM AUSTRIA』で、ちなつさんは一言話すだけで、ドカンと笑いをとっていました。
その前の「オンザタウン」でも感じましたが、とても「間」が上手で、コメディセンスがあふれています。
今や「紅ゆずる」さんに通じるような、コメディアンヌぶりを発揮できる筆頭は、ちなつさんであり、『出島小宇宙戦争』では、それを堪能できると思っていたので、少し残念でした。

ちなつさんの次の活躍を期待したいなと思います。

ライブビューイング無しとは…

『出島小宇宙戦争』は、東西相当なチケット難公演です。
私も入手できたのは、観劇した1枚のみ。
「ライブビューイング」をやってくれたら、ぜひ見に行きたいですが、ライブビューイングの予定は無いようです。

「赤と黒」は、長期公演な上に、ライブビューイングがあります。
トップスターが出演されているということで、この差があるのでしょう。

しかし、「需要と供給の法則」にそって欲しいと思います。

「赤と黒」は、柴田先生の名作なので、先日スカイステージで11年前の星組のものが放送されたばかりで、作品を味わおうと思ったら、それを見れば作品の内容はわかります。

しかし、『出島小宇宙戦争』はオリジナル作品で、初日があいてから評判が良いので、「見てみたいな」と思っている人は、私以外にも多いはずです。

多分ブルーレイ等も販売されず、スカイステージで放送されるのを待つことになるでしょうが、評判になって「見たい!」という熱い思いは、なかなか半年以上は継続しません。

話は違いますが、特に「バウホール」公演は、座席数が少なく期間も短いので、私のように会に属していないものは、「観れるか観れない」は、チケットの抽選に当選するか、どうかの「運」次第です。
美弥るりかさんのバウ「アンナ・カレーニナ」では、ライブ中継が実現したので、今後もその実現を期待したいところです。

そして今回の『出島小宇宙戦争』のような作品も、もれなくライブ中継をして、「観れない残念感」を補っていただけたら、嬉しいと思っています。
この作品、観るごとに受け止め方が変わるような、奥深いものだとも思っています。

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