令和の宝塚オリジナル作品に期待
令和の新時代、宝塚のスターはキラ星のごとくいて、人選に悩むほどで、恵まれていると思います。
しかし心配なのは「作品力」について。
特に心配なのは、宝塚の「オリジナル作品」についてです。
「退団公演」は「オリジナル作品」が定番で、トップスター退団公演の星組と花組2作品と、宙組1作品の3作品が今年は控えています。

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宝塚のオリジナル作品とは?

宝塚の特長は、座付き演出家一人が「作・演出」を担うことです。
原作の無いものを一から書き下ろす作品が「オリジナル作品」と呼ばれています。

簡単に言えば、海外ミュージカルの「潤色・演出」作品や、原作のある作品を除いたもの。原作のある作品に対しては「脚本・演出」と表示されます。
「作・演出」と表示されるそれらの作品は、どんなベテランが担当しても当たり外れが大きい。(特にハズレが)
ファンからは駄作と言われることが多いです。

最近は宝塚以外の作品を観に行くことも多いのですが、外部の作品の脚本の良さを、宝塚のオリジナル作品に比べて特に感じます。

宝塚では、お芝居が駄作でも、ショーで楽しければ良いか、という寛大なファンの心があります。

原作があっても、現在東京で上演中の『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』(脚本・演出/齋藤吉正)は、女性ファンの目には良作とは思えませんでした。

2019年はオリジナル作品が多い

平成の時代の宝塚は、小池修一郎氏の生み出す作品力の高さによって、宝塚が高いレベルを実現できたと言えます。
『エリザベート -愛と死の輪舞-』『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』『1789 -バスティーユの恋人たち-』『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』『ポーの一族』など。
原作のある作品の「潤色・演出」「脚本・演出」においては、小池修一郎先生は「天才」ですが、オリジナル作品においては今一歩という評価が多いです。

そして「小池修一郎氏」に続けと生田大和氏が初めての「オリジナル作品」の本公演1本もの『CASANOVA』を「作・演出」として担当されました。
全楽曲ドーヴ・アチア氏が提供するという贅沢なおまけつきで。
衣装も華やかで、舞台装置も最新鋭の映像技術を採り入れた豪華な舞台でした。
明日海りおという円熟期の大スターが中心なので、「見る舞台」としては十分楽しめましたが、話の筋は浅く、感動を味わうような作品ではありませんでした。
タイトルの「祝祭喜歌劇」という言葉でくくれば花組の魅力が存分に楽しめたので成功でしょうが、ここで生田大和氏の手腕を評価できるかと言われると、そうでも無いように思います。

現在大劇場で上演中の「オーシャンズ11」は映画が原作で、脚本・演出/小池 修一郎氏のエンターテインメント性の高い作品です。
『CASANOVA』についても、ディズニーの世界観のようにエンターテインメント性を楽しむ作品といえば、まさにそうです。はじめからそういう作品づくりを狙っていたのなら、成功と言えるでしょう。

2017年に月組で上演された脚本・演出/小池 修一郎氏の『All for One』もその傾向にあり、これからはエンターテインメント性の高い作品が好まれていく傾向にあるのかなと感じてもいます。
しかし今年の大劇場1作目の『霧深きエルベのほとり』作/菊田 一夫 潤色・演出/上田久美子 は、感動を味合わう素晴らしい作品でした。
最近の宝塚では、この上田久美子氏のオリジナル作品は、唯一ファンから高い評価をえています。

次に雪組で上演される『壬生義士伝』~原作 浅田次郎「壬生義士伝」(文春文庫刊)~脚本・演出/石田 昌也は、原作があるので「オリジナル作品」ではありません。

2019年今後のオリジナル作品
星組 紅ゆずるサヨナラ公演
『GOD OF STARS-食聖-』
作・演出/小柳 奈穂子

花組 明日海りおサヨナラ公演
『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』
作・演出/植田 景子

宙組 真風涼帆主演公演
『El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-』
作・演出/大野 拓史

星組の『GOD OF STARS-食聖-』は、今まで「紅ゆずる・綺咲愛里のトップコンビ」と小柳作品との相性が良かったので、特に紅ゆずるのキャラクターを生かした、楽しい作品になることを期待しています。

花組の明日海りおが演じた植田作品「ハンナのお花屋さん」はメッセージ性のある素晴らしい作品に仕上がっていて、明日海りおの魅力もさらに高まりました。最後に明日海と植田先生がタッグを組む作品も、明日海りおの魅力の集大成になると期待値しています。

宙組の真風涼帆と大野拓史は昨年和物ショー『白鷺の城』でも組んでいました。今度の作品は異国での日本人を描く『ヒロイックで快活な娯楽作品』ということで、どういう作品になるのかわかりませんが、真風涼帆の魅力がいかされる作品になればいいなと思います。

2018年「オリジナル作品」

宙組『異人たちのルネサンス』
作・演出/田渕 大輔

花組『MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−』
作・演出/原田 諒

星組『ANOTHER WORLD』
作・演出/谷 正純

昨年の「オリジナル作品」は、上記の3作品でした。評価は個人によって違うかもしれません。
くららは、「殺し屋谷正純」と言われていた先生が、あの世を描いた作品は、それまでの死生観を覆した集大成と言える、とても良い作品だと思いました。

脚本を専門家が書く場合

戦後すぐなどは、「菊田一夫脚本」や、外部の方の本を使う事もあったようです。
最近では大石静氏の2011年「美しき生涯」2015年「カリスタの海に抱かれて」があります。
脚本を外部に依頼したからといって、ヒット作品とはならないようです。

あえて日本物作品を演じること

現在雪組は大変人気がある組ですが、次に大劇場では、日本物の『壬生義士伝』が上演予定なので、チケット難な公演にはなっていません。
宝塚ファンには、日本物より洋物が観たいという需要のあらわれでしょう。

しかし本公演では年に2作品は日本物が上演されます。

2年に1度『宝塚舞踊会』が開催されています。(2019年10月29日(火)16時~)
日本物の伝統を守るべく、日頃の修練の成果を披露する場で、専科生と公演に差し支えない組の主要メンバーらが出席します。
日本物を上演することは、宝塚のこの伝統を守るためでもあるのでしょう。
ファンにも歓迎されないし、初めて宝塚を観劇する人にとっても、洋物のお芝居やショーの方が「宝塚らしさ」を感じますが、「宝塚の伝統」と言われるとこの流れは守っていくしかないのでしょう。

ファンとしてどんな作品が良いか

「エリザベート」が上演されると、どの組でも凄いチケット難になります。
「ファントム」も、昨年の雪組の上演が4回目でしたが、トップ二人の歌唱力をはじめ完成度が高かったので、凄い人気になりました。
総じて海外ミュージカル作品は人気が高くなります。

今度の月組公演は、初めて下記のオーストリアミュージカルが上演されます。
『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』
潤色・演出/齋藤 吉正

「潤色・演出/齋藤 吉正」は、以前に「TOP HAT」で高い評価を得たので、本公演1本ものは、齋藤氏の初挑戦となりますが、多分成功されるだろうと思います。

海外ミュージカルには、総じて駄作がないので、誰もが期待して観劇にいきます。

座付き演出家を多く抱えている宝塚の売りは、本来は「オリジナル作品」だと思うので、「オリジナル作品」の満足度が上がっていって欲しいと思います。

また、今年は生田大和氏と齋藤吉正氏が大劇場での1本ものに初挑戦となっています。
今まで小池修一郎氏が1本ものを中心に担っていらっしゃいましたが、「世代交代」を始めていきたいのでしょう。
まだまだ小池氏の力が必要だと思いますが。

革命児上田久美子先生

先ほども書きましたが、「オリジナル作品」の満足度が高いのは、上田久美子先生です。
そして上田先生は、革命的な思いをお持ちで、ショーでは「BADDY」という意表をつく作品をつくられました。

フィナーレで大羽根を背負ったトップスター珠城りょうさんが、サングラスをかけタバコを手に大階段をおりてきて「邪魔だ、どけ!」と組子たちを押しのけます。
そしてフィナーレのシャンシャンと言われる持ち物が「タバコ形になるセンス」!
「タバコは悪」という世間の考え、『現在の社会は良くも悪くも善悪の線引きが厳しくなり、以前はグレーゾーンだった範囲も悪と見なされるようになったと感じています』
上田久美子先生はあくまで「現代社会への批判」としてこの作品を書かれたと話されていました。

この作品を観劇して、上田先生もスゴイですが、それを上演させた「宝塚歌劇団」も新しいと感動しました。
しかし「宝塚歌劇団」も阪急阪神ホールディングス株式会社に属しています。

上田久美子先生のOnce upon a time in Takarazukaとして『霧深きエルベのほとり』を再演した精神や、社会に対しての反骨精神は、素晴らしいと思います。
しかし今の宝塚が100%上田先生を受け容れていけるのか、が心配になってきます。

本心はいつまでも、宝塚のオリジナル作品を書き続けて、素晴らしいものを魅せていただきたいです。
次の作品が公表されていませんが、令和の宝塚の中心で活躍していただきたい!

しかし宝塚では、10年程前に 荻田浩一先生は宝塚を去っていかれました。
その後ミュージカル制作などでご活躍で、OSK日本歌劇団の作品も多く手掛けておられます。

令和の宝塚は、海外ミュージカル、原作ものだけでなく、宝塚のオリジナル作品でも存分に楽しませていただきたいと願っています。
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