上田久美子氏作「バイオーム」観劇感想
こんにちは、くららです。
「バイオーム」を観劇してきました。
劇場に入ると、立体音響実現のために多数のスピーカーが配置されていました。
舞台の上には、白い円形のステージがあって、その背後を白いのれんのようなものが囲んでいます。
“スペクタクルリーディング、五感を揺さぶる朗読劇”、どんなものに出会えるのだろうか、ワクワクしながら座席に着きました。

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観劇の感想

開演時間になると、真っ暗な中、森の中を風が吹くような音が聞こえてきて、その音が変化するので、耳をそば立てました。
ストーリーの展開と共に、背後の映像が、音と共に絶妙に変化して臨場感を盛り上げていることも、五感がすぎさまされていくような感じがしました。

私の気のせいかもしれませんが、2幕のはじめは、苔のようなにおいが漂っていたように思いました。

朗読劇という話でしたが、リーディングは一部で、スペクタルリーディング、かつてない試みでした。
お話の内容と出演者たちの迫力と熱量に圧倒されて、心が揺さぶられ続けました。
スゴイ作品を味合わせてもらった!という感動で帰ってきました。

上田氏と一色氏のタックル

まず一色氏から始まった作品

一色隆司氏は、NHKエンタープライズのエグゼクティブ・ディレクターを務めていらっしゃる有名な演出家です。。
「公演プログラム」に記載された一色氏と上田氏の対談によると、今回演出を担当した一色隆司氏梅田芸術劇場と何か上演しようと考えている中で、朗読劇という企画が上がったそうです。

その中で、宝塚を退団する上田先生が書いてくれるかもしれないと白羽の矢が立って、まず初対面の2人がお見合いのような形で長時間お話をされたそうです。

そこで二人は感性がとても合っていることを感じ、意気投合して、「何を書いても良い」と一色氏が上田氏に本を託されて、上田氏が今の社会や世界から自分が受け取ったもの、何か自分を通して出てくるものを即興的に形にするというのを試したいと思って「バイオーム」を書かれたそうです。

それは、政治家一家の人間関係を、彼らを見つめる庭の草木の視点からも描いている異色作でした。

一色氏は、そのとてつもない台本を受け取って、初めは『どうしよう!』と思われたそうですが、奥深く、スケール感のある作品になるだろうと、この作品の制作を進めていかれたようでした。

この公演の発表があった時に、「上田先生のフリーのデビュー作は梅田芸術劇場主催!」と話題になりましたが、一色氏とのご縁が先で、たまたま梅田芸術劇場主催作品という流れになったようです。

上田先生は、完全にフリーな立場のようです。

本の内容についても、一色氏の方が「ルイとケイをひとりの役者で表現したらどうですか」とアドバイスをされ、上田先生もそのアイデアに驚かれて、その通りにされたそうです。
一色氏も斬新なアイデアをいろいろと提供されて、「バイオーム」の話が膨らみ深まったようでした。

上田氏は宝塚時代は、脚本・演出を全部ひとりで担って孤独だったそうです。
一色氏もいつも孤独を感じておられ、そういう二人が今回タッグを組んで作品をつくられ、大成功になった繋がりました。

上田氏は卓越した才能に恵まれていますが、やはり誰かの後ろ盾がないと、その奇才を活かすことはできません。
それまでは宝塚歌劇団でしたが、今回は一色さんと梅田芸術劇場という強靭な関係があったことが、成功のカギになりましたね。
上田先生は、本当に運の良い方だなと思います。

この作品の成功は、脚本の上田先生、演出の一色さんはじめ映像技術、そして豪華な出演者たちの熱演にあると思います。

豪華な出演者たち

7人の本当に豪華な出演者たちが揃えられています。

まず勘九郎さんの出演が決まったそうです。
そして花總まりさん。次に…と、トントン拍子に。

麻実れいさんについては、上田先生が麻実さんがクロマツとして重々しく喋っているのを聞いてみたいというところから、この作品をはじめられたそうです。

歌舞伎で主演をはる勘九郎さん、今度帝国劇場で上演される『エリザベート』で主役のエリザベートとトートの役の花總さん古川さんなどなど、贅沢すぎる出演者を集められるのも、梅田芸術劇場主催であるからでしょう。

そして公演期間が極端に短いのも、出演者たちのスケジュール調整が難しくて、そうなったのでしょう。今回は実験的な試みで次に続くような気がします。

その役者さんたちが、“産みの苦しみ”を味わいながら役をつくっていかれたそうです。
その“産みの苦しみ”が、魂に響く演技となって、心にドーンと響いてきました。

この作品は、「スペクタクルリーディング」で終わりではなく、この形式で上演されたのちに、VRやARなどのテクノロジーを駆使した“体験型サイトスペシフィック演劇”へと進化するようです。

配役について

勘九郎……ルイ / ケイ(8歳の男の子と女の子)

花總まり……ルイの母・怜子 / クロマツの芽(植物)

麻実れい……家政婦フキ/古い樹木のクロマツ(植物)

古川雄大……庭師の野口 / 一重の薔薇植物

野添義弘……ルイの祖父・克人 / クロマツの盆栽(植物)

安藤聖……花療法士(セラピスト)のともえ / 竜胆(植物)

成河……怜子の夫・学 / セコイア(植物)

何といっても勘九郎さんが、8歳の男の子と女の子を自然に演じていて驚きました。
パーマをかけていて印象がとても若返っていました。
そして仕草は子どもそのものの自然体でピュアでした。
176cmの長身なのに、子どもに見えるのですから、本当に【役者】です。

他の出演者それぞれの方も本当に素晴らしい演技力で味合わせてくれました。役者さんに“産みの苦しみ”を味合わせるほどの脚本が書けるということも、脚本家の腕なのでしょうか。なんだかそういう思いもわいてきました。

作品から感じた上田先生

「バイオームには、今の社会から受け取ったものを即興的に書いた。」と上田先生は仰っていました。

上田先生が「今の社会」をどのように受け止めていらっしゃるのか、よく伝わってきました。
セラピスト兼シングルマザーのともえの激白に、その思いがあらわれていました。
政治家家族を取り上げたことも、その存在に対して疑問や様々な思いを持たれているからでしょう。

「血」にこだわり、力を持つことに腐心する人間。
人間の心底を描くには、性的なことも避けられません。
宝塚で描かれることのなかったそのあたりのことも、描かれていました。

感覚がないと思われていた植物にも意識がある。無垢な人間は自然と交感できるかもしれない。
上田先生の、この新しい気づきが題材の礎になったようです。

上田先生は正直にストレートに思いを伝えられる方だなと思いました。
その正直さ、ピュアさが、私には魅力的に思え、心地よいです。

今後もそのピュアさを残して、社会派としても活躍して欲しいなと思いました。

「バイオーム」アーカイブ配信中

6/月11日(土)17:00〜6月14日(火)23:59~
アーカイブ配信中

視聴チケット価格:¥4,500 →eplus配信

観劇に不安を感じた自分を反省

上田久美子氏が宝塚を退団された直後に、上田先生作の朗読劇『バイオーム』が上演されると発表されました。
ちょうど上演される時期に宙組『FLY WITH ME』で遠征予定だったので、迷わずチケットを購入していました。

しかしその後、「バイオーム」の制作発表記者会見がありました。

勘九郎さんがルイとケイという、8歳の男の子と女の子を演じるという内容を見て、ちょっと引いてしまいました。
「一体何を見せられるのだろう?」かと。

貴重な遠征期間なので、「バイオーム」をやめて、宙組の『FLY WITH ME』を見る回数を増やした方が良いのではないだろうか?と不埒なことを考えてしまいました。

「定価以下限定チケット掲示板」を覗いてみると、「バイオーム」のチケットの譲渡祭りでした。
上田先生の作品と言うことで、勢いでチケットを購入したものの、私と同じように不安になってチケットを手放したいと思った方が多くいらっしゃったのかな?

しかし手放さず、観劇出来て本当に良かったと思いました。

久々に心が揺さぶられ、深く考えさせられる作品でした。こういう作品は自分の人生のこれからの助けにもなります。

何事も先入観でとらえてはいけませんね。
自分の知らない違った世界が広がり続けています。
エンターテイメントの世界は無限大に進化しつづけているように思います。
その中に奇才上田久美子先生が加わったことで、さらに新しい領域が開拓されていきそうです。

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