雪組『壬生義士伝』2回目感想
初日を観劇して、昨日は2回目の観劇でしたが、やはり期待以上の感動をいただきました。
初日は、笑うべきではない所で笑いが起こっていたり、語尾をのばしたりの違和感がある部分の芝居が直されていて、さらに演者が進化していて、素晴らしく感じました。
「日本物」というと私を含めファンは興味がうすくなりがちですが、この『壬生義士伝』は単に「日本物」ではない、珠玉の感動作品です。

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望海風斗のとびぬけた芝居力

望海さんは、初日から「吉村貫一郎」の役創りの完成度の高さに驚かされましたが、周りに縦横無尽に合わせつつ、引っ張っていっていてもう「芝居の天才」としか言いようがありません。

「吉村貫一郎」とは、とてもピュアな心の人で、だいもん自身のピュアさが、そのまま「吉村貫一郎」の魅力に通じていました。

どんな時も謙虚で腰が低く、下級生が演じる役にお酌をして回るのも全く自然に演じられていました。
家族に送金するために守銭奴のようにお金のためなら何でもやるところを演じますが、決してそれが卑しくない。
南部弁も自然で朴訥さが出ていて、日本物の所作も手馴れていて、いざ剣をもつと一番腰が据わっていて、殺陣がすばらしい。
だいもんの「吉村貫一郎」は、その芝居力によって、時には軽妙で、悲痛な時はさらに悲痛に、その時の心情がそのまま客席にわかりやすく伝わってきます。

今回「声の変え方」も惹きつける芝居の良い要素になっていました。
青年の時は高い声で、父親になってから、新撰組内で、死を前にして、その時々の魂のこもった「いい声」が余計に心に響いてきました。
それに加えて満点の心を打つ歌唱力は言うまでもありません。手島恭子先生のメロディーがとても素晴らしかったので、さらに歌の伝える力が大きな感動につながりました。

しづ/みよ役の真彩希帆ちゃんの芝居力・コンビの良さ

真彩希帆ちゃん演じるのは、貫一郎の愛妻しづと貫一郎が新鮮組に入ってから家族に送金を続ける姿を見ているうちに貫一郎に心を寄せる両替商・鍵屋の娘、みよの二役。(しづに面影が似ているという設定)
貧困にあえぎ、夫の帰りを待つ「忍」のしづを母性愛を交えて清楚に演じられていました。「陽」なエネルギーに満ちた真彩ちゃんですが、和物の控えた演技も巧みでした。
もう一つのみよ役は、もう少し濃く演じられるのかと思い、初日から変化しているかな?と思ったものの、「貫一郎を死なせたくない」という思いが前面にあるものの控えた演技で、日本物なので全体とのバランスを重視して演じられているのだなぁと感心しました。
「望海風斗・真彩希帆」コンビの巧みさは、日本物の演技においても互いの歌唱力の相乗効果も加わって、特別なコンビと印象づけてくれました。

吉村家の子どもたちの演技力

長男 吉村嘉一郎…彩海 せら
長女みつ(少女)…彩 みちる

彩みちるちゃんの演技力は、「るろうに剣心」の弥彦役で立証済み。今回は女の子なので、より自然に表情豊かに少女みつを演じられていました。
2015年、「星逢一夜」で、新人公演初ヒロイン、その次の「るろうに剣心」で新人公演2回目のヒロインを演じ、「ドン・ジュアン」(神奈川芸術劇場・ドラマシティ公演)で、望海風斗の相手役の初ヒロインを演じてから、大きな役から少し遠のいていましたが、今回の新人公演では3回目のヒロイン役。期待大です。

彩海くんは、10歳の頃と15歳の頃を演じたので、子役というより少年役。
しっかりとしたお兄さんの役と父親を亡くした武士の息子としての役を堂々と凛と演じていました。
整った顔立ちに日本物は良くあいます。
新人公演で初の主演ですが、だいもんの適切なアドバイスを受けて、あみちゃんらしい「吉村貫一郎」を演じられるでしょう。

主演予定の吉村家の子どもたち二人の舞台姿を見て、新人公演がさらに楽しみになりました。

大野次郎右衛門役の彩風咲奈さん

貫一郎の幼少からの親友「竹馬の友」である大野次郎右衛門。
初日は私の問題ですが、制作発表時のイメージがあったので、強い印象は残りませんでしたが、2回目には堂々とした演技で渡り合う中で、二人の厚い友情が感じられ良い役だと思いました。最後大野次郎右衛門が熱唱している途中で銃に打たれるのは、「?」でした。

お稽古が始まったばかりで役が創りこまれていない中で制作発表をすることは、マイナスのイメージをすりこんでしまうのではと思いました。

凪七瑠海さん軍医・松本良順としてのストーリーテラー役

新撰組メンバーと共に激動の幕末を生きたという設定ですが、当時の劇中に1度でも接触場面があれば、よりリアリティがあったかと思いますが、セリフだけなのが少し残念でした。
歴史の生き証人として昔を懐かしみながらの台詞回しは巧みで、終わりの思いをこめた独唱がフィナーレにつながっていくのがよかったです。

朝美絢さんの齋藤一役

齋藤一役は幕末、明治と両時代ともに登場し、貫一郎と拮抗する重要で難しい大役ですが、朝美絢さんが選ばれ、すでに鋭い目の演技やクセのある演技で十分その期待にこたえられていると思います。更なるの進化が楽しみ。

宝塚だからこそフィナーレがある救い

凪七さんが鎮魂の歌を絶唱した後、銀橋で吉村貫一郎・だいもんが歌い継いだら、舞台中央にしづがいて、明るい回想シーンになります。
素晴らしい歌唱の中、出演者総出となり幕切れに繋がっていきます。

出演者総出のシーンに立っている一人ひとりが「役」として立っていて、特に 新選組の土方歳三役の彩凪翔君や、沖田総司役の永久輝せあ君などの居構えには惹きつけられました。
その中に「斎藤一」がいないと思ったら、明治時代の「斎藤一」として最前列にいました。「あっそうだった」と改めて時代の流れを思ったり。

「最後の哀しいシーン」で終わりにせず、芝居だけにもフィナーレをつける宝塚的な終わり方を歓迎するのは宝塚ファンだけかもしれません。
宝塚ファンでも要らないと思う方もあるでしょう。先の星組の全国ツアー「アルジェの男」は、主人公が銃に打たれて、ヒロインが絶叫して終わりでした。

後にショーがある場合は、悲しいシーンで終わりになることもありますが、『壬生義士伝』は最後にだいきほコンビの笑顔を見ることで、よかったなと私は感じました。

「大きなことを成し遂げたわけではないけれど、周りの人の心に何かを残していく」 という生き方に魅力を感じ、「トップとして、吉村のような人になれたら」と憧れを抱く。

『壬生義士伝』の記者取材でだいもんがおっしゃっていた言葉です。
こういう心をもってトップをつとめていらっしゃるから、今の雪組はより輝いて素敵なのだと思います。
トップコンビの実力はスゴイですが、それ以上に組全体の空気感も良く、今の雪組を観劇すると本当にいろんなものを受け取れ、幸せです。

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