『ON THE TOWN』の初日の感想
月組『ON THE TOWN』の初日を観劇してきました。
梅田芸術劇場の正面の壁面に、宝塚の超大型ポスターが掲示されたのは、初めてではないでしょうか。(写真参照)
入口の柱にまで、ゲイビー、アイヴィ、オジー、チップの4人の笑顔が飾ってありました。

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素敵な楽しい舞台でしたが、コメディとしては、今一歩でした。
この作品は、見る人によって、賛否両論ある作品だと思います。

野口幸作先生のはじめてのミュージカル

1944年初演のブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN(オン・ザ・タウン)』は版権の都合上、原作通りにしなければならないという制限の中で、野口幸作先生が潤色・演出されたようです。
レナード・バーンスタイン作曲による素晴らしい音楽と、ジェローム・ロビンス振付による圧巻のダンスシーンに特徴があります。

それまでショー作家だった野口先生が初めて翻訳ミュージカルに初挑戦された作品なので、振り付けを5人の振付家に依頼されていたり、魅せ方にショー的な要素がふんだんに取り入れられていて、ショー作家の作る「宝塚のショーの延長のミュージカル」としてなら十分見ごたえがあります。
梅田版はフィナーレが増えたようで、その分楽しめる要素が増えたと思います。

「ブロードウェイ・ミュージカル」を宝塚で上演する意味

「ブロードウェイ・ミュージカル」としては、どうなのでしょう?
今年の春に雪組で上演された「20世紀号に乗って」を観た後だけに、作品の完成度の違いを感じました。
コメディ作品は、コメディセンスが必要だと思います。
「ブロードウェイ・ミュージカル」を生オケで上演するなら、それにふさわしい歌唱力も。

宝塚の魅力は、どんな作品でも「宝塚風にねじ伏せて魅せること」にあると思います。
この作品は「宝塚風」にアレンジされていましたが、ねじ伏せて魅せるところに今一歩及んでいないような印象をもってしまいました。
(あくまでも、偏見に満ちた私の思いです)

『アメリカンコメディ』のコメディセンス
珠城りょう君の人柄は、おおらかで実直で、仲間からの人望もあるゲイビー【ニューヨークで24時間の上陸許可を得た海軍水兵】という役柄にピッタリだと思います。
しかし真面目すぎてコメディのセンスが今一つなのかなと感じました。

花組から5年ぶりに月組に戻ってきて今回初出演のオジー役の鳳月杏君は、コメディセンスがあふれていて、何か動作をするたびに、笑いを誘っていたように感じました。
花組では、『Ernest in Love』や『ME AND MY GIRL』などに出演されてコメディセンスを磨かれたのも大きいのかも。

りょう君は表情豊かにオーバーアクションでお芝居をされ、微笑ましく感じても、それが笑いにはなかなか繋がらなかったような…
何か動作をするたびに、笑いを誘っていたちなつさんとの違いを感じました。
(ゲイビーとオジーという役柄の違いや、演出の意図するところが違うのかもしれません。)

月組の方々は皆お芝居については「職人気質」で巧みで、キャラを立てて演じることで、笑いをとっていました。
特にベテラン夏月都さんと白雪さち花さんのコメディセンスには、今までの経験の積み重ねが感じられます。

オーケストラ演奏が素晴らしい

客席前方がオーケストラピットになっていて、指揮が甲斐正人先生と豪華!
素晴らしい生演奏が聴けることに感動しました。

ステージの下手寄りにそのオケボックスをまたぐ橋がありました。
その橋は、下手前方のドアから主要なメンバーが何度も登場した時と、フィナーレでの客席おりに使われていました。
フィナーレの客席おりについて
客席おりは、フィナーレの終盤で、舞台にりょうくん、さくらちゃんを残して、大半の人が客席に降りていました。
やはりありちゃんが元気いっぱいに走り回っていて、後方下手側の通路を駆け巡ってハイタッチしていました。
その対で、ちなつさんが後方上手側で、ありちゃんと同じくらい全力で駆け巡りながらハイタッチされていました。

『ON THE TOWN』出演者の感想

珠城 りょう……ゲイビー
ずっと水兵衣装のままは気の毒だと思っていたら、2幕では黒いシースルー衣装、フィナーレでは海軍のキャプテンの衣装でトップスターらしく良かったです。

美園 さくら……アイヴィ
露出系の衣装が多い中、健康的で、いやらしくならずに可愛いのがスゴイ!
主演娘役にも慣れてきて、華やかさも備わってきていますが、なぜか堂々としていなくて、自信がないのかな、初日で緊張しているのかな?と感じました。

鳳月 杏……オジー【海軍水兵。ゲイビーの友人】
組替え後初出演。プログラムでも、ご挨拶でもちなつさんが男役の2番目(2番手)の位置でした。
オジーらしいワイルドさを漂わせていましたが、水兵には似つかない大人の色気に満ちていました。

“『すごくいいスターになっただろ!』と自信を持ってお返しできます。”明日海りおさんに言わしめた、男役として完成度の高いちなつさん。

カーテンコールでは、りょう君から「おかえりなさい、ちなつさん」と声をかけられていました。
コメディセンスをはじめとして、実力者として月組で活躍していかれるだろうと思います。

暁 千星……チップ【海軍水兵。ゲイビーの友人】
以前は男役として背伸びしていた感じがありましたが、最近はありちゃん自身が「パブみ(幼さ)」をマイナスと捉えず受け容れて、「パブみ」と「オラみ(セクシーな男らしさ)」を自由自在に切り替えているように感じています。
かわいい雰囲気だったチップが男の部分を出していく部分も自然に上手に演じ分けていました。

海乃 美月……ルーシー【ヒルディのルームメイト】
今までお姫様系の娘役さんだったのに、肉布団をまいて見た目の良くない「モテない女子」の役。なんのてらいも無く思い切りよく演じられていてビックリと尊敬。
見た目が悪くても、可愛らしさが感じられる品のある「娘役魂」を持った方。
これからも「娘役魂」でどんな役も素敵に演じられる予感。
フィナーレで美しいダンス姿を見れてホッ。怪我は回復されたよう。

夢奈 瑠音……クレア【人類学者】
男役が演じる金髪女性は美しい、少し大きいけど。東京では蓮つかさが扮して大絶賛をあびた役を今回は夢奈瑠音君が。
ちゃっかりしていて悪びれない大胆な女性の役をダイナミックに演じていて、ソプラノ歌唱もキレイでした。

英真 なおき……ピットキン【裁判官。クレアの婚約者】
東京では輝月ゆうまが好演していた役を、専科の理事になって初登板。
出番は少ないものの、やはり長く経験を重ねてきた重鎮は、存在感がピカイチで全体を締める。専科の方の存在は本当に貴重。

まだまだ書き上げたい方は多いですが、長く書きすぎてしまいました。

リピーターチケトは、S席平日のみ、1000円引きで販売されていました。チケットホルダーなどのオマケはありませんでした。

今回、白雪さち花、夢奈瑠音、海乃美月の役替わりがあるので、もう一度観劇する予定です。

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