夢現無双  吉川英治原作 観劇日記
昨日「残念作ではなかった」と敢えて訂正ブログを書いたのは、観劇しての感想は人それぞれであり、観てもいない状態でくららが書いていたことを反省したからです。ネタバレありますので、内容を知りたくない方は、読まないでくださいね。

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美弥るりかの存在感が光っていた

主演の武蔵の珠城りょうの舞台にいる時間に比べると、佐々木小次郎の舞台の登場時間は極端に少ないですが、でもその存在感は抜群でした。

オープニングは、新免無二斉・武蔵の父親(紫門ゆりや)が佐々木小次郎に負かされたところから始まります。
そこから武蔵と佐々木五四郎との因縁がスタートしているようですが、話の途中からわかってきます。

長い剣を素早くさばく剣の達人

佐々木小次郎は、通称「物干し竿」と呼ばれる刃長3尺余(約1メートル)の長い太刀の使い手だったとか。
身長が高い方ではない美弥ちゃんは、その長い剣をいつも背負っていて、闘いの時は素早く振り回します。
その目にも止まらぬ速さで振るうのを秘剣「燕返し」の技というそうです。
その長い剣を素早くさばくことは、どんなに大変かと思うのですが、表情一つ変えることなくそつなくこなされているところが流石というしかない。
相当練習していらっしゃるのでしょう。

和物で洋風の洒落感を出せる男役

本日美弥るりかディナーショーのdsの画像がアップされましたね。
このアンニュイな色気にあふれる美弥様!これぞ“美弥るりか”

和物ではさらに目がキリリとして小次郎はため息が出るほど色気のある男前。
そして表情が変わらない孤高の麗人!
斎藤先生が書き加えた「キリシタン」設定もより、小次郎の神秘性に磨きをかけています。
美弥ちゃん特有の色っぽい仕草も、和物においても通用するのが美弥の独断場と言えるでしょう

『美弥さんは宝塚を代表する麗人で、後にも先にも存在しない唯一無二の男役スター』
という齋藤先生の発言通りの佐々木小次郎が舞台上で燦々と光り輝いていました。

武蔵と小次郎の対比が面白い

「無骨で骨太、たくましい硬派」珠城武蔵に比べて、
「孤独な無敵の美剣士」美弥小次郎という対比が見事です。

武蔵の物語ですから、珠城武蔵は半分以上舞台上にいます。
それに比べて、美弥小次郎は、登場してもサッと去っていくことが多く、舞台上にいる時間は短いです。

しかし、スマートでスタイリッシュな「麗人」美弥小次郎の存在感は、短い出番でも半端ありません。

この二人の対比がより美弥ちゃんの存在感を際立たせていました
美弥るりかが、2番手になってスターとしてより光っていったのは、珠城りょうとの対比があったことも大きいと感じました。
『いかに自分の個性を魅せるか』を常に考え、自己演出を巧みにしてきた美弥るりか。
「生真面目」「実直」「誠実」に、与えられる役を精一杯何とかこなしている珠城 りょう。

そして武蔵は、様々な経験を積みながら剣の道を極めていった先で、父親を負かした因縁の小次郎と決闘することになります。
小次郎が武蔵の成長を待つという設定なので、珠城と美弥の5年の学年差が妙にマッチしていました。
そして二人は完全なるライバル関係です。

巌流島の決闘のシーンは時間は短いものの、緊張感が漂い迫力があるシーンでした。
小次郎が斬られてそのまませり下がっていったことも、この話の流れのなかでは仕方ないと思いました。
そのことで残念と言うより、美弥ちゃんの存在感が際立ったように、くららは思いました。

『夢現無双』では、美弥るりかにしか醸し出すことのできない、佐々木小次郎像で、有終の美はじゅうぶん飾られていたと思います。

今回、美弥ちゃんに次ぐ際立った活躍をしていたのは、れいこちゃんとありちゃんです。

月城かなとの又八について

武蔵の幼馴染の親友で一緒に剣士を目指しながらも、自身の心の弱さに勝てず生来の怠け癖で楽な生き方を選んでいきます。
武蔵とは対照的な「ダメンズ・ヒモ男」として描かれています。
ダメ男だけど、憎めない人物像を人間味たっぷりにユーモラスに演じていて、「フフフ」と思わず笑いが起こる清涼剤にもなっていました。
美しいれいこちゃんが演じるからこそ、余計にダメ男さが面白いので、「美しい」とは得だと思います。
二の線を崩壊させて、三の線にスッポリもっていけるのもれいこちゃんの技術です。

ビジュアルと実力を兼ね備えながらも、何か決定打にかけていると言われているれいこちゃんは、こういう所で磨かれ続けて、今後大きな花がひらいていくのだと思います。
十分次のステップへの準備が整いつつあるのでは。

暁千星の吉岡清十郎について

京都の名門・吉岡道場の若き当主である吉岡清十郎 一度目は道場破りに来た武蔵を負かし、二度目は武蔵に負かされてしまいます。
舞台の登場時間は極めて短いですが、吉岡清十郎もかなりインパクトがある役です。

道場主としての貫録とプライドと力強さが漂っていて好演していました。京言葉も良かったです。
ありちゃん自身の人間性も豊かに表現されていて、背伸びをしなくてもそのままで味のある男役を演じることができていました。
(こういう時をくららは待っていました。万歳!)

「じゅりの音楽同好会」でひたすらおばあちゃん風味の趣味を言っていたのは、渋い男役になりたい願望からも来ていたのかな?と思いました。

和物でこういう味のある男役が出せるようになったら、これからどんな男役が来ても大丈夫ではないでしょうか。
これからのありちゃんの男役に大いに期待できそうです。

月組のわき役は充実している
目まぐるしい物語の展開の中で、武蔵をめぐる多くの人物が次々に登場し、それぞれが個性がきわだっていて充実しています。
時間の尺が短いのがもったいないくらいです。

主役武蔵の珠城りょうは、精一杯武蔵を演じられていて好感が持てました。
顔に泥を塗り、泥くさい演技もされていました。
武蔵は殺陣、殺陣、殺陣の連続で、舞台でそれを披露できるまでに上達するには、どれほどの鍛錬が必要だったかと思います。
それを初日までにこなすことのできる技術力と精神力はスゴイと思います。

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『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より』に対する思い

実のところ、歴史に疎く時代劇にも全く興味のないミーハーなくららに合っている作品ではありませんでした。
でも、時代劇が好きで、歴史に造詣が深い方、原作を読んでいる方には、とても面白い作品だと思います。特に男性には良いかも。

原作は4年間に渡って新聞に連載されたもので、全8巻、または全6巻の大変ボリュームのある内容です。
ボリュームのある作品を1時間半でまとめあげて、作品として見せる斎藤先生の手腕はスゴイと思いました。
天紫珠李の白い鳥が様々なシーンで踊っていたり、インパクトのある舞台装飾など、単調になりがちな和物の舞台に様々な趣向がこらされていました。

『吉川英治原作「宮本武蔵」を珠城りょうで見せる』という主題は斎藤先生の譲ることのできない信念のある作品のようなので、話はとにかく詰め込まれています。
通常1時間半のお芝居に5の内容を入れているとしたら、今回はその倍の10以上は入っているでしょう。

そのためプロローグもサッと登場人物が出てくるだけの盛り上がらない中で進み、開演アナウンスさえ、物語が展開している途中で流れてきます。

「見せ場」が息つく間もなくドンドン進められていきます。

客席の心が動いても、次の展開に進んでいるので、感動の落としどころがありません。

私のすぐそばに熱烈な美弥ちゃんファンが座っていらして、ショーの美弥ちゃん場面では、すすり泣いたり嗚咽されたりしていました。
しかしお芝居では美弥ちゃんが巌流島の対決で斬られてせり下がっていく時も何も反応されていなかったので、ショーが始まるまで、美弥ちゃんの熱心なファンであることに気づきませんでした。

『夢現無双』は、時代劇が好きであろう人をターゲットに作られているように感じました。

くららは全くターゲットの外です。

『バガボンド』という井上雄彦による漫画作品が、吉川英治の原作『宮本武蔵』を基に描かれているようです。
1998年から『モーニング』(講談社)で連載が開始された。単行本は37巻まで刊行され、2015年2月の掲載を最後に休載が続いているそうです。
それが原作に忠実なので、分厚い小説を読むよりわかりやすく、その漫画を読んでいたら、『夢現無双』は非常に面白いそうです。

37巻もある『バガボンド』を読む元気もないので、観劇する毎に話の内容を少しずつ理解し、発見していきたいと思います、

ショーの『クルンテープ 天使の都』が楽しいので、通えそうです。

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