1年前に上演された星組・落語ミュージカル『ANOTHER WORLD』が先日スカイステージと、NHK BSプレミアムで深夜に放送されました。
記憶力が悪い方ですが、ストーリーや歌詞やセリフを不思議なほど覚えていました。
それは、大劇場にとりつかれたように通っていたからです。
回数は覚えていませんが、私の観劇史上最高だと思います。
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挫折時に『ANOTHER WORLD』と出会う
昨年ゴールデンウィーク前に、ライフワークとして頑張って続けていた心のよりどころだったことを、体の障害のためにあきらめなくてはならなくなりました。
それを自分自身が一番受け入れられなくて、「どうしようもできない」気持ちを抱えていました。
大劇場の公演期間(2018年4月27日(金)~ 6月4日(月))の頃が、辞める決断をしたり、対処しなければならなかった時で、一番辛い時でした。
大劇場では、ドンピシャと『ANOTHER WORLD』が上演されていました。
初日の幕があいた翌日が初観劇でした。
希望に満ちた104期生の初舞台生の口上があり、その後チョンパで一気に華やかで煌びやかな舞台となり、美しい若衆と美女たちが踊り歌い、その真ん中に大好きな紅さんがいます。
紅さんから出ている温かい、包み込むようなやさしさ、笑顔。もうその姿を見るだけで涙が出そう。
そこから『ANOTHER WORLD』の世界に引きこまれていきます。
紅さんが演じる康次郎は、ほぼ全場に出演していて、ピュアで一途で真面目。
笑わそうとしなくても、何をしても面白い。
“なんでもあり”の登場人物たちも、それぞれ味があって個性が際立っていて、面白い。
“あの世”の落語噺を題材としているから、奇想天外でハチャメチャが面白い。
暗い気持ちで沈んでいる時が多い私も、コメディが大好きなので、観劇中は暗いことは忘れて、終始笑い続けていました。
まさに捧腹絶倒ミュージカルでした。
そして最後に紅さんが
生きてさえいりゃ、どんな苦労も乗り越えられる。 いっぺん死んだ気イになってやってみなはれ、この世は極楽、命に感謝や! |
「生きてさえいりゃ」この言葉に、心から励まされました。
でもヘタレで悟りきれない私は、励まされても、励まされても、落ち込んでしまうので、空いた時間にチケットが手に入れば通っていました。
『ANOTHER WORLD』は、宝塚では異色の作品なので、作品に対する賛否両論があって当然だと思います。
チケットが手に入れやすい状態で通えたことは有難かった。
『ANOTHER WORLD』千秋楽後寝込んでしまった
この公演が千秋楽を迎えると、心が弱い私はまだ完全に受けいれ、割り切れていなかったので、外出する目的が無くなったのもありますが、しばらく寝込んでしまいました。
1年たった現在も、益々できないことが増えていくので、この問題と対峙しながら葛藤中ですが、生かされていることを感謝して、クヨクヨしない!
「線維筋痛症」という、毎日が「お産」の時のようなとんでもない痛みも以前に経験したこともあり、完治はしていませんが、現在痛みは大分軽いので、有難いと思っています。
『ANOTHER WORLD』が伝えてくれること
『ANOTHER WORLD』では紅さんが全身全霊をかけて、「生かされていること、感謝なこと」を伝えてくれました。
「霧深きエルベのほとりに」を命がけで演じていると仰っていましたが、全場出演で常に話の真ん中で物語を動かす康次郎も全身全霊で演じておられたと思います。
宝塚は、観劇後に笑顔で幸せな思いで帰りの途につけることが魅力の一つだと思っています。
この『ANOTHER WORLD』は、それだけにとどまらない「命があることの有難さ、生きていく大切さ」を伝えてくれる素晴らしいエンターテインメントだと思います。
紅ゆずるだからこそ『ANOTHER WORLD』の主役がつとまる
『ANOTHER WORLD』の主演は「紅ゆずる」だからこそできたもので、他で誰ができるだろうと考えても、思いつきません。
その後も、なかなか紅ゆずるさんのようなスターさんは、出てこないのでは無いかと思います。
紅さんの卓越したお笑いのセンス
紅さんは「間」と「テンポ」の天才です。
ただ普通にお芝居をするだけで間とテンポで笑いを誘います。(ご自身は綿密に計算されていると思います)
落語家の桂米團寺さんも、紅さんのお笑いのセンスを大絶賛されていましたが、お笑いの重鎮からみてもそうなのでしょう。
紅さんはお客の空気を感じ取って演じる
紅さんのすごいところは、一方的に演じるのではなく、「お客さんの反応をみて楽しませる」こと。
なかなかできることではありませんが、だからこそ客席にダイレクトに伝わってくるのです。
紅さんの感受性が豊だからこそ、もあると思います。
今まで様々な苦労や経験をされて、人の心をくみ取る繊細さを身に着けられ、真ん中に立っていらっしゃる。
だから心の痛みをもったり、悩んでいる人の心を惹きつけ、包んでくれる温かさがあると思います。
映像ではこの紅さんの空気感を感じ取るのは、難しいこともあります。
今回の『ANOTHER WORLD』は、NHKもスカイステージも映像でも紅さん色に包まれて楽しめました。
劇場でダイレクトに見たら、より何倍も楽しめると思いますが。
品があるコメディ作品
紅さんは大阪育ちのネイティブの関西弁ですが、今回ははんなりとした上品な「船場言葉」に工夫されたと語っておられました。
紅さんは、男役としての色気や品もきちんと持っていらっしやいます。
だからこそ、“何でもあり”の奇抜さが満載であっても、宝塚の品のある「抱腹絶倒ミュージカル」に仕上がったのだと思います。
お衣装が豪華なことも「あの世の世界」が別の世界・まさに『ANOTHER WORLD』!
紅さんを中心にして、星組にはパワーがあります。
そのパワーが元気を与えてくれます。
谷正純先生の脚本、演出
この作品が上演される直前の谷先生の作品は、雪組の別箱『CAPTAIN NEMO』で、最後に出演者の多くが死んでしまいました。
谷先生は「人は死に様に一番のドラマがある」と仰っているそうです。
亡くなる人が多いのは、「争いの虚しさ」を訴えたいから。
争いは何も生まない、平和への思いが強いからこそ、「死」を芝居にとりいれられてきたそうです。
『ANOTHER WORLD』を通して、谷先生の「死生観」が伝わってきました。
舞台の終わりに歌詞でストレートに伝えておられます。
生れ落ちたる 命ぞ宝 貰ったお宝 有難く 悩みあろうと ただ生き抜いて この世の喜び 謳歌しろ そーりゃ そりゃ そら ありがたや そーりゃ そりゃ そら ありがたや |
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今回NHKでは深夜の放送だったため、見た方も少なかったと思います。
ぜひ多くの視聴者が見れる時間帯に放送して多くの方にこの作品の感動を味わっていただきたいです。
今年のお正月早々に星組の「エストレージャス」の舞台中継が放送されましたが、『ANOTHER WORLD』の方が絶対に喜ばれたと思います。
『ANOTHER WORLD』の素晴らしさを味わうと、『紅ゆずるさんの持ち味を生かしたコメディを観たい』と思うのは当然のこと。
この次に『GOD OF STARS-食聖-』が用意されています。
今度は紅さんと相性の良い小柳先生によって、最高傑作コメディになるでしょう。
7月12日が初日です。楽しみすぎます。
でも紅さんのサヨナラ公演なので。まだまだ先とも思いたい!
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