紅ゆずるの魅力
昨日から星組東京公演がはじまりました。私は10月13日で退団される紅ゆずるさんが大好きです。このブログの再開も、賛否両論ある紅ゆずるさんのことを沢山語りたいと思ったのもあります。

しかし思いが整理できずに、もう他に10記事以上書きながらも、一番書きたかったさゆみさんのことが、なかなか書けませんでした。紅ゆずるさんの魅力などについて、少しずつ小出しに記事にしていきたいと思います。

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「霧深きエルベのほとり」のカールがそのまま「紅ゆずる」

今宝塚で一番期待されている「脚本・演出家」というと上田久美子先生です。
その感性に優れている上田先生が、「霧深きエルベのほとり」の再演にあたり、紅ゆずるを主演でと選ばれました。
主役カールの心が紅ゆずるそのものだからです。

カールはわざと不真面目にふるまったり物事を冗談めかしたりして、何が本心なのかわからないような面がありますが、実はとても真面目で誠実な男性です。そういうところが紅と非常に合致していると思います。彼女もユーモアを前面に出している部分がありますが、実は周りの人の気持ちがよくわかる繊細な人です。もし私が彼女を主演にした新作を作るとしても、このカールのような役を書いていただろうと思います。しかしながら、カールのような本物の男らしさを持つ役を生き生きと魅力的に描くには、今の私の力ではまだまだ及びませんので、今回は菊田先生のお力をお借りしたいと思っています。(引用:宝塚公式ホームページ演出家 上田久美子が語る Once upon a time in Takarazuka『)

悪ぶってみせながらも、その心は純粋で、自分のことより他者のことを大切に思い、幸せを願い、他者への優しさと愛に満ちている。
そして不器用なため、その思いが誤解して受け取られやすい。

この作品のカールを初演と退団公演で演じられ、ご自分の代表作とされている内重のぼるさんが「霧深きエルベのほとり」を紹介する番組の中で、悪ぶれた外面とやさしさを備え持つカールという役を演じることが、どんなに難しいかを語っていました。

その難しいカールを紅ゆずるさんは見事に演じられ、客席の心を打ち、すすり泣く声が多く聞かれる深い感動を残してくれる公演でした。

人間としての深みが増しつづけている紅カール

さらに、大劇場の初日から千秋楽にかけて、舞台の上でカールという人間性はさらに深まっていきました。
上田氏のこだわりのダメだしもあったでしょうが、それに応えて変化し続けていく「紅ゆずる」の本質は生真面目さ実直さそのものです。

宝塚大劇場の千秋楽で、「ぜひ東京公演にお越しください」と何回も強調されて言い続けていらっしゃいましたが、その翌日に退団発表がされ、退団会見をし…
そういう予定の中で、まず目の前の東京の公演に注力したいと思われていることが伝わってきました。

東京公演初日前の記者取材でも、
「退団のことはさておきって感じ。この公演を新鮮な気持ちで挑んでいる。1回1回公演を命がけでやっているので、一瞬一瞬を楽しんでほしい」と語られたそうです。
さらに人間性が深まったカールによって、東京公演『霧深きエルベのほとり』は、宝塚大劇場よりもっともっと感動の舞台となっていくでしょう。

実直すぎて、誤解されやすい紅ゆずる

カールが照れ屋で自分の自己表現が下手なように、紅さんはトーク力が誰よりもありながらも、一言多くて誤解を生みやすいところがあります。

先に紹介したトークでも「1回1回公演を命がけでやっているので」という、紅さんの本心だと思いますが、この表現が大袈裟だと捉える方もいます。

このように、紅さんは、サービス精神旺盛なので、言葉が先走りしてしまうところがあるのです。そしてそれが誤解されやすい。

お芝居中にとちったり、歌詞を間違えたら、わざわざ間違えたことを紅さんは舞台上でお客さんに言います。
そんなこと言わなくてもいいのにと思いますが、誠心誠意舞台をつとめなければならないと思っているからこそ、自分の失敗が申し訳なくて許せなくて、言ってしまうのでしょう。
舞台上ではプロフェッショナルであるべきだと思う人は、そういう姿をマイナスに捉えて、「不真面目だ」と指摘します。

こういう面もふっくるめて、私は「紅ゆずる」の魅力だと思いますが、価値観は人それぞれ違います。

実力派と比べられやすい位置

紅ゆずるさんの前任の星組トップスターは、その実力でトップに返り咲いた北翔海莉さんです。
北翔さんのトップ期間は、3拍子揃った実力を武器にファンの満足度をあげていきました。

しかし、その後トップを継いだ紅さんは、舞台に立って華があるビジュアル派の筆頭のような方で、実力派ではありません。
コメディセンスをはじめとする個性的なスター性が売りです。

そのため、星組で実力派のファンに応えるために、歌とダンスが特に秀でた実力派の礼真琴さんが2番手となり、活躍する場が多く与えられるようになりました。
紅ゆずるさんの1年後に雪組トップになった望海風斗さんも実力派の筆頭のような方で、何かと比べられる立場でした。

紅さんの相手役としてトップ娘役になった綺咲愛里さんは、可憐さが売りのビジュアル派で、ダンスは得意ですが、
「紅ゆずる・綺咲愛里」コンビは、「ビジュアルだけで実力が無い」と決めつけられるようになりました。

たまたま北翔海莉、礼真琴、望臨風斗という実力派のスターと一番比較される位置にいたため、「実力がない」という一言で比べられて。とても割りをくっていると思います。

私が知っている40年余の宝塚の流れの中で、スター性があるということだけで、実力は関係なかったスターは、沢山いらっしゃいます。
私からみれば、紅さんは宝塚の標準的な線では歌えています。
紅さんの個性的なお芝居もそんなに突飛なものでは無く、私は心が伝わってくる紅さんのお芝居が大好きで、元気をいっぱいもらってきました。

「実力派」の舞台は確かに素晴らしいです。でも宝塚の世界は虚構の世界なので、現実離れした美しいカッコいい男役も必須事項です。そういう男役さんを見て魅了されたいという気持ちも変わりなくあります。

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「みんな違って、みんな良い」5組ある宝塚

2017年9月に星組の大劇場公演『ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA』と雪組全国ツアー『琥珀色の雨にぬれて/“D”ramatic S』を交互に何回か観劇しました。

星組『ベルリン、わが愛』では、最後のパリ行きの夜行列車に乗る前に、紅ゆずるさんはトレンチコートを着ていました。
小顔でスマートな長身に襟を立てたトレンチコート姿が、超絶カッコ良く、相手役綺咲愛里さんの衣装もお洒落でかわいく、今でもその二人の素敵な光景は目に焼き付いています。

雪組の「琥珀色の雨に濡れて」でも、ラストに望海風斗さんがトレンチコートを着た場面で歌い上げて終わりました。
望海風斗さんが愛した人と別れる心情を素晴らしい歌唱力で歌い上げて、その歌の力のすばらしさに圧倒されました。

お話は全然違いますが、同じトレンチコートを着ている設定で、ビジュアルで楽しませてくれる星組の紅さんと、歌の力で楽しませてくれる雪組の望海さんとの違いを見せつけられました。

私はトップがビジュアル売りの星組も実力売りの雪組もどちらも好きで、それぞれが素敵だと思っています。

現在宝塚は5組あります。
実力派の組、個性派の組、ビジュアル派の組、〇〇派の組、多様性のある時代の流れの中で、宝塚5組の魅力も多様性があることが良いと思っています。

優等生でなかった紅ゆずる

紅ゆずるさんは、在団時に48人中47番という成績で、いわば劣等生でした。
宝塚の成績序列は役の抜擢にも関係しますから、入団当初は役に恵まれない中、めげずに努力はされていました。
2008年4月バウ・ワークショップ「ANNA KARENINA」でカレーニン役を演じ
同年7月に入団7年目にして、「THE SCARLET PIMPERNEL」で新人公演初主演し、その時からスターの道を歩むことになりました。

新人公演の主役をしたからといって、みんなスターになれるわけでなく、才能や努力以外に「運」も大きいです。

紅さんは、2007年に自主的に趣味のような感じで星組若手メンバーと「紅5」を結成していたところ、『Brilliant Dreams「紅ゆずる」~personal~』で放送されて注目されるようになりました。
トーク力があることから、スカイステージの「MC」としても活躍するようになり、
「Brilliant Dreams+NEXT 紅ゆずる編(全6回)」が放送されて、各回「紅5」メンバーが出演して最終回はコンサート(2011年12月に)も行い、「紅5」の人気は不動のものになりました。

宝塚ファンであった紅さんは、何をすれば宝塚ファンに喜ばれるかを理解されていて、ファン目線で「紅5」をプロデュースしていったことが、人気をあげていった要因だと思っています。

たまたまスカイステージという番組で個性を売りこめ、多くのファンを獲得でき、キラ星のごとくスターのいた星組でトップになれたことは、「スターは劇団につくられる」という説を覆したスターの一人と言えます。

路線外からトップスターになった「紅ゆずる伝説」は、宝塚の生徒に夢を抱かてくれる存在になったのではないでしょうか。
そして紅さんがトップになった時は、「組子一人ひとりが輝ける星組にしたい」と述べられ、先日の退団会見でも「宝塚に入団したくても入団できなかった人たちの方がずっと多い、その人たちの思いも背負っていることを忘れてはいけない」というような内容を話されていたと記憶しています。

いつもそういう心情を抱いているトップスターの人間性は素晴らしいと思います。

紅ゆずるさんアンチ

先日花組の大劇場公演を観た幕間、近くの初対面のヅカファン同士がヅカ談義をされていました。
「星組は今のトップさんが苦手だから、トップが変わったら観ようと思っているの」
「私もよ」
という会話が聞こえてきました。何となく、こういう会話を耳にすることあります。

そういう声を聞いた時に、本当の魅力を知って欲しいなと残念に思います。

お稽古場映像とかではなく、生の舞台は、演者の魂が伝わってきます。

アンチ紅ゆずるの方にも、ぜひ「霧深きエルベのほとり」のカールを観ていただき、紅ゆずるの本質・魅力を味わっていただきたいです。
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