こんにちは、くららです。
現在、『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』がYouTubeで無料配信されていること、ご存知ですか?
9月1日からで、いつまでの無料配信かは明らかにされていません。素晴らしい舞台なのでお時間がある方は、ぜひはやめにご覧ください。⇒「オペラ座の怪人」

『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』について

『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』について

1986年のロンドン初演から25年を記念して、2011年に高名なロイヤル・アルバート・ホールでわずか3公演のみ行われた、伝説のステージです。

私は劇団四季で『オペラ座の怪人』を観劇した時、宝塚の『ファントム』に比べてストーリーの淡白さに、今ひとつ惹かれなかったのですが、この映像を通して初めて、ロイド=ウェバーが仕掛けた音楽の魔法と、怪人の底知れぬ哀しさに身震いするほどの感動を覚えました。

ファントム役は、ラミン・カリムルー。望海風斗さんのソロコンサート『SPERO』のゲストとして出演された、あのラミンさんです!世界の頂点で放つ怪物的な歌唱力でした。そしてクリスティーヌ役は、シエラ・ボーゲス。ラウル・シャニュイ子爵役はハドリー・フレイザー。

この映像は、私のこれまでの「舞台映像」に対する常識を、根底から覆すものでした。

「これ、本当に舞台の一発勝負の生中継なの?」

舞台の中継であるはずなのに、まるで映画のために個別に撮影されたかと思えるほどに鮮明で、計算し尽くされたカメラワークでした。役者の瞳に浮かぶ涙、息遣い、そして巨大な空間のダイナミズムが、完璧なアングルで画面から溢れ出していました。

これは生中継された映像をベースに、全3回の公演からベストなカットを厳選して再編集された「コンサート映画(映像作品)」で、今から15年前の、当時の最高峰の技術を注ぎ込んで作られていました。

宝塚の舞台映像について

「オペラ座の怪人」と「宝塚の舞台映像」のクオリティがあまりに違う

そして、日頃抱え続けてきた「ある消化しきれない思い」が、わいてきました。

私は、宝塚の劇場に足を運ぶと同時に、ライブ中継やライブ配信も数多く視聴してきました。
『オペラ座の怪人』が提示した世界基準のクオリティを目の当たりにした時、あまりの次元の違いに愕然としました。

日本の「最高峰」だったNHKの舞台中継

近年のNHKの8K・4K技術を用いた舞台中継は国内最高峰のものでした。NHKは、最高の画角と可動域を確保するために、客席の座席を大胆に潰して空席を作っていました。公共放送としての潤沢な予算と、最高峰の舞台を最高峰の技術で残すというプライド。それらが噛み合った映像は実に見事でした。

しかし、2023年の劇団内の悲しい事件以降、NHKは宝塚から事実上撤退し、今なお収録の予定はないとのこと。NHK側の台所事情もあって、復活は難しいようにも感じています。日本の演劇映像化におけるトップクオリティの「外部の目」を失ったことは、宝塚にとって計り知れない損失です。

そして現在の宝塚の舞台映像は、完全に「コストパフォーマンス」重視のビジネスへと舵を切っているように感じています。

先日の花組東京千秋楽『蒼月抄』(5月31日)のライブ中継・配信では、カメラの配置に十分なデッドスペースが取られていなかったのか、1幕では画面の全景(引きの映像)が映るたびに、前に座る「座高の高い観客の後ろ姿の影」が大きく画面に映り込んでいました。

チケットがプレミア化する千秋楽だからこそ、劇団はカメラの配置のためのデッドスペースを作らず、客席を1席でも多く売りたいのでしょう。

生観劇であれば、「前の人の存在で見えにくい」というのは席の運不運であり、諦めもつきます。しかし、ライブ中継・配信は「安心して画面を観られる」と信じて、決して安くない対価を支払っています。

アップ映像には関係がなかったとはいえ、全景に切り替わるたびに現実へと引き戻されるノイズは、舞台の夢の世界を台無しにするものでした。幕間の休憩時間に対処されたようでショーでは映らなくなっていましたが、その後の劇団の姿勢にもがっかりしました。映像作品として致命的な不手際がありながらも、公式からは何の説明も、謝罪の一言もありませんでした。

宝塚の映画館ライブ中継は5,000円、自宅でのライブ配信は4,000円です。劇場で最も安いB席が3,500円なので、生舞台よりも映像の方が高いという「価格の逆転現象」が起きています。それほど強気な高額料金を徴収し、コアなファンから確実に利益を回収しているのなら、カメラの前に人が被らないように席を買い取る(空席にする)コストくらい、企業として当然支払うべき必要経費だと思います。

現在の宝塚歌劇団は、阪急阪神ホールディングスのアジア積極展開(不動産や商業進出)において「インバウンド誘致・ブランドの旗振り役」としての立場を明確にしています。星組のトップスターコンビをタイ・バンコクへ派遣して訪日PRを行わせ、アジア圏での映画館中継を拡大する戦略は、ビジネスとしては非常に巧みです。

しかし、外向けの華やかなアピールの裏で、足元である国内ファンの「観劇体験のクオリティ」は、コストカットによって軽視されているように感じています。それでもファンは何も言わずに買ってくれるという、供給側の甘えと傲慢さを感じずにはいられません。

「ライブマルチアングル配信」の料金に疑問

そして、その「巧みなビジネス化」の最たるものが、新しく導入される「ライブマルチアングル配信」だと思っています。

スマートフォンやタブレットの画面を指でタップし、自分でアングルを切り替えられるという、一見すると先進的なシステムですが、価格は強気の5,000円!

新しいもの好きな私は、4年ほど前にも、当時のNTTが仕掛けた「革新的な新映像配信」とやらに大きな期待を寄せました。しかし結果は、スマホの小さな画面内で完結するだけの、舞台のダイナミズムとは程遠い期待外れに終わりました。

今回のシステムもまた、大画面テレビへの出力(ミラーリング)は公式にサポート対象外であり、実質不可能なようです。

好きなスターを見たいというファンの心理にこたえているのかもしれませんが、スマホやタブレットの小さな画面に縛り付けられ、素人である観客が指を動かして、本当に見たいアングルを満足に切り替えることができるのか?実験的段階は超えているのか?

宝塚の舞台は、衣装の細かな刺繍、下級生に至るまでのフォーメーション、そしてスターが放つオーラ。私は大画面テレビで浴びるように観てこそ生きると思っているので、劇場のB席の料金を遥かに超える5,000円の設定では、食指が全く動きません。

宝塚ファンは、「観られるだけで有り難い」という謙虚さをもっていますが、劇団はその優しさに甘えているように私は勝手に感じています。

舞台のクオリティを担保することこそが、110年以上続いてきた宝塚のブランドの、本当の源泉であると思っています。その映像もそれに準じていって欲しいと思っています。

『オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドン』を見て、ちょっと厳しめの内容になってしまいました。
現在YouTubeで無料配信されている「オペラ座の怪人」は、一見どころか、百見の価値があります!無料配信が終わる前にご覧になってみてください。

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