納得の演出『殉情』帆純まひろ主演観劇感想
こんにちは、くららです。
花組バウワークショップ 帆純まひろ主演『殉情』を土曜日に観劇しました。

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花組バウワークショップについて

今回の作品は、「監修・脚本/石田昌也」で、「潤色・演出/竹田悠一郎」です。

竹田先生の新演出にとっても興味があったのですが、とても良い仕事をされていました!

2022年の絵麻緒ゆうさん再演の映像を見て、「ここは無くして欲しい」と思っていた所が多々ありましたが、見事に無くなっていました。

私の感性は石田先生より、竹田先生に合うようです。

しかし、これはいらないだろうと思うところもありました。
このあたり、後ろで説明しています。
ネタバレしていますので、知りたくない方はスルーしてください。

新人公演の救済

「歌劇10月号」の石田先生の公演の解説で、「花組の新人公演が少なくなってなってしまって、ワークショップという形で何かできないか」ということになり、お芝居で見せる作品で、今回の『絢情』の上演になったようです。

2チームに別れていて、98期までの上級生は2チームで同じ役を、99期からは、どちらかに出演されています。

主演の一之瀬航季さん
一之瀬航季さん(100期)は『はいからさんが通る』の新人公演の主演に抜擢されましたが、コロナ禍で新人公演公演が中止になってしまいました。
とても悔しい思いをされたと思うので、今回一之瀬さんに主演の機会があって本当に良かったです。10月30日(日)〜11月7日(月)の上演予定です。

主演の帆純まひろさん
帆純まひろさん(100期)は、コロナ禍前に研7で『CASANOVA』の新人公演の主演をされました。1回だけです。
帆純さんの新人公演は、コロナの影響を受けていませんが、今回ワークショップで主演のチャンスが得て、美形繊細な芝居力、所作、そしてスター性を見せてくださいました。

今年の春に帆純さんは別箱『TOP HAT』で、超3枚目のアルベルト・べディーニを演じられましたが、今後路線スター寄りに軌道修正されるような気がします。
それぐらい、帆純さんの佐助は役者として開花した素晴らしいものでした。

そして、新人公演のチャンスを逃した103期生、104期生に活躍の場が与えられていました。
みんなが熱くてパワフルな舞台を魅せてくれました。

石田先生と竹田先生の演出の違い

芝居は感じるもの

私は生の舞台は、観客が五感で感じるものだと思っています。

2500人収容の大劇場だと、広すぎて役者の演技が観客にしっかり伝わりにくいこともあるので、時には親切な解説も必要かと思います。
しかし526人収容のバウホールのような小劇場では、同じ空間を共有していて、役者の演技や空気感はしっかり観客に伝わってきます。

テーマについて

石田先生は、公演プログラムにこの作品は「愛しすぎることも、また…愛されすぎることも罪である!」がテーマであると書かれていました。

20年前の作品では、佐助と春琴が感動的なラストを迎えた後現代パートの3人(マモル・ユリコ・石橋教授)がこのテーマについて、語り合っていて、唖然としました。

作品のテーマは、説明されるものではなく、観客それぞれが感じとるものだと思います。

竹田先生の演出では、全く愛について語られることは無かったです。

感動のラストに涙している方は多かったです。
余韻が残ってよかったと思いました。

YouTuberがストーリーテラーは間違っていた

そして20年前は、現代パートメンバーが頻繁に登場して、ストーリーテラーの役割を担っていました。場面が変わるごとの頻度で登場されていました。

『殉情』の初日の幕があがって、webの公演評などを読み漁りました。
現代のマモル(希波らいと)は、郷土史を専攻する大阪の大学生のYouTuber設定だと知りました

「YouTuberがストーリーテラー」という公演評の見出しがあったので、20年前と同じように、現代パートの3人がストーリーテラーの役割を担うのだと思っていました。

しかし今回の竹田演出は、違っていました。

幕が上がると、現代パートのマモルユリコ教授が、佐助と春琴が眠る墓地で、二人の人生について語っていきます。

ストーリーテラーはその時だけ、1回限りでした。厳密に言うと、途中で少し説明はありましたが、それが主では無かったです。

ストーリーテラーがいなくなった分、お芝居が長く深くなっていました。

ゆったりとしたストーリー展開

20年前は、ストーリーテラーが説明するからと、原作のあれこれが詰め込まれて、速巻きで舞台は進んでいました。

今回エピソードが削られたことと、ストーリーテラーの現代パートが削られたことで、時間に余裕ができて、春琴と佐助のドラマが深く描写され、惹きこまれやすくなっていました。

削られたエピソードは、春琴の船場の商人の娘らしいがめつさの描写です。
着ること食べることに贅沢だったため、金銭に対して貪欲でケチで、盆暮れの届け物を厳しくチェックし、弟子たちに対しても、金銭や贈り物を優先して、態度や対応が変わったようです。
弟子たちへの指導も厳しく、将来芸者になる少女の頭を撥で叩き、傷を作ったことで、その父親が殴り込んでくるシーンなども削られていました。

佐助が目に針をついた時の「痛い」という絶叫と、のた打ちまわって痛がる様も、今回はだいぶ緩和されていたのは、見る側にとっては良かったと思いました。

マモルとユリコの関係

初日にスカイステージで「NOW ON STAGE」が放送されました。

ユリコ役の美里玲菜さんは、「マモルの友人のユリコ」と紹介されました。

初演の時から、マモルユリコは、恋人設定です。

友人?恋人?
舞台を観てその意味がわかりました。

幕が開いた頃のマモルユリコは、まだお互いの心が通じあっていませんでした。だから友人だったのでしょう。

舞台の本編が進行していくのと同時に、マモルとユリコは、佐助と春琴を題材にした動画をつくっていきます。
動画づくりには様々な困難があり、相手の気持ちを思えばこそすれ違ったり、ふたりの関係はギクシャクしたりしました。

舞台本編のラスト、佐助は春琴の思いをくみ取って、愛のために自ら針を眼に刺して失明し、春琴と同じ盲目の世界の中に入れたことでこの上ない幸せを感じ、二人は互いに心を解放して、心が通じ合います。
師弟を越えた、二人だけにしか踏み込むことができない愛の世界に到達して、本編は終わります。

マモルとユリコも、お互いに心を解放して心が通じ合うようになり、二人だけの世界がはじまっていきます。新しい二人のスタート。ここからが恋人

物語の中の「佐助と春琴」と、令和を生きる「マモルとユリコ」の対比を見せながら、それぞれの愛の世界が描かれていたように思いました。

現代パートは途中にも必要だったろうか?

現代パートメンバーは、プログラムで数えてみると、途中で5回登場していました。

「佐助と春琴」と「マモルとユリコ」の対比の相乗効果を狙われたのでしょうが、私には佐助と春琴の世界が少々ぼやけて見えたように思えました。

原作では、語り部の「私」が口伝えに語るスタイルなので、現代パートが語り部の役割を担うのもわかります。

終わりは、本編が終わってフィナーレの主演コンビのデュエットまでに時間が必要なので、現代パートが登場して、ストーリーを締める必要はあるでしょう。

その間に、令和を生きるマモルとユリコの恋愛事情が本当に必要だったのかには、疑問符が残りました。

マモル役が2番手という配役事情

20年前の作品では、マモル役を演じた当時研5の新進男役の音月桂さん、佐助の心象を表現する鬼のダンスでも目だつ活躍をされていました。今回希波らいとくんはダンスを担当されていませんでしたし、全体にダンスも短めでした。

宝塚では番手スターに、それなりの活躍を振る必要があるので、マモルを大きな役にしなければならない事情もあったのでしょうか。

原作を変えても良いの?と思った部分

春琴は台所に忍び込んだ「何ものか」によって沸騰した湯を顔に浴びせかけられ、顔にやけどを負ってしまいます。

その「何ものかの正体は谷崎潤一郎の原作では明かされていません。

「何ものは誰か」読者があれこれ思いを巡らしています。

今回の作品では、利太郎(峰果とわ)が春琴に眉間を撥で突かれて、「覚えてなはれ」と捨て台詞を残して立ち去った夜に、千吉(天城れいん)に耳打ちして、春琴の住まいに忍び込ませていました。

観劇していて、この展開にビックリしました。

「春琴抄」と言えば、谷崎潤一郎さんの、純文学として有名な作品です。
原作を読んだことのない学生さんが、宝塚でこの作品を観て、これがあらすじだと思いこんでしまったら、どうするんでしょう?

20年前の作品では、春琴には敵が多かったと語られていて、「何ものか」の正体は原作と同じで明かされませんでした。

宝塚の作品を観て、文学を読んだ気になる方が間違っているでしょうが。

内輪受け?

お正月の現代の甘酒屋に石田先生が指ハートした「キュンです」ポスターがありました。
このポスター、とってもとっても目立っていて、ついつい何度も見つめてしまいました。

竹田先生は、石田先生への感謝の思いを込めて、このポスターを貼られたのでしょう。

バウホールの公演を見に来るのは、宝塚ファンなので、「クスッ」と笑って、その師弟関係に温かい気持ちになるだけでしょう。

でも『絢情』は、内輪受けを狙うような作品でもないように思います。

重い作品に、クスッと笑える軽さを提供するのは、峰果とわさん(98期)演じる「アホボン」の利太郎!
20年前は、専科の箙かおるさんが演じられ、化粧も白塗りで、更にお笑いに走っていて、行き過ぎを感じていました。今回はちょうど良い塩梅だったと思います。

利太郎とペアで笑いを生む天城れいんくん(104期)の千吉もノリが良くて、オトボケメイクの振り切った演技で、とっても存在感がありました。

利太郎と仙吉は、こうして愛すべきキャラクターとして描かれているのに、原作に無い犯罪行為をこの二人に最後にさせたのは、やはり?が残ります

利太郎の馴染みの芸者のお蘭詩希すみれさん(103期)は、綺麗で艶っぽくて、ソロの歌もお上手で、聞かせてくれました。

ヒロイン春琴朝葉ことのさん(103期)は、演技も歌も所作も、とってもお上手で本当に実力派の娘役さんだと思いました。
ただ春琴は、目をつむって性格のキツイ「盲目の美女」を演じなければなりません。目をつむって、厳しい表情をしても、美しい女性が演じてこそ、春琴の説得力があります。

顔立ちが特別に整った美女に適した役です。月影瞳さん、紺野まひるさんには適任でした。

朝葉さんは、表情が豊かで、可愛い女性ですが、目をつむってしまうと、朝葉さんの良さが台無しになっていました。そのへんが少し残念だと思いましたが、大健闘されていました。

またもや、超長文の駄文になってしまいました。

どちらの主演公演も配信があります。
・帆純さん主演…10月21日(金)15:00公演
・一之瀬さん主演…11月5日(土)15:00公演
一之瀬さんの方が土曜日なので、都合が良い方が多いかもしれません。

若手さんたちの頑張りを見ると、宝塚は不滅だなと思います。

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