上級生2番手の退団公演に思う
こんにちは、くららです。
現在大劇場で上演中の花組『アウグストゥス-尊厳ある者-』と『Cool Beast!!』を3回観劇して、私は面白い公演だと思っています。
しかしチケットの売れ行きは、先に行われた雪組、星組と比べると芳しくないようです。
大人気の望海さんの雪組退団公演と、礼真琴くんの満を持しての究極の星組「ロミオとジュリエット」が圧倒的に人気過ぎました。
さらに今は関西のコロナの感染状況がとても悪化しているので、観劇を控える方は多いと思います。

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上級生2番手という存在

ひとつだけ私が感じたのは、「2番手の瀬戸かずやさんの退団公演」としてのはなむけが、従来のトップスターが頂点のスター制度の邪魔をしているかな?ということです。
瀬戸かずやさんのお芝居やショーでの活躍、2番手羽根を背負われたこと等、とても良かったと思っています。決して否定する心はありません。

あくまでも「私の勝手に感じていること」を書きますので、私の感覚が大きく偏ったり、ズレているかもしれませんので、この先は許容できる方だけ読んでください。

本来の宝塚のトップスターを中心とするスター制度

昔から宝塚はトップスターが一番目立つ豪華な衣装を着て、真ん中に堂々と位置し、強いライトを浴び、ヒーロー然として…
トップスターの在り方は何となく決まっています。

宝塚を初めて観る人と観劇しても、トップスターは衣装ライトで必ずわかると言います。
それに続くトップ娘役、2番手や3番手人たちも衣装が差別化されていて、なんとなくわかります。
大きな劇場なので遠くからは顔も判別しにくく、衣装の差別化や目立つ形での登場シーン、ライトなどが、トップスターを認識する手立てです。

『アウグストゥス』ではトップスターが視覚的にはトップに見えない

今回のお芝居『アウグストゥス』では、主演の柚香光君演じるオクタヴィウスは、花道から登場したり、弱弱しい面が目立って、宝塚の「ヒーロー」という雰囲気とは全く違います。
衣装も途中、トーガという布切れをまいた形に赤いラインが入っているものを着ている時があり、それは多くの出演者たちのものと全く同じものでした。

ブルートゥスを演じた永久輝せあ君もこの衣装一着で、まわりのポンペイウス派の人たちや政治家も同じで、衣装の差別化はされていませんでした。
セリフも沢山あって熱演されていて良い役なのですが、衣装が埋もれていることで、「見せ場」がぼんやりとなった印象を持ちました。

しかし、2番手の瀬戸かずやさんのアントニウスだけは、目立つ衣装で、トーガを纏った時もカエサルと同じ赤っぽいもので、それは二人だけ特別でした。
凪七瑠海クレオパトラとのシーンでは、「王家に捧ぐ歌」の時のラダメスとアムネリスの豪華な衣装でした。
二人とも真ん中からの目立つ登場シーンや、ラブシーン、最後の見せ場もあります。

瀬戸アントニウスは、ヒーロー的な熱さがみなぎっていて視覚面だけでは「主役」のように見えます。

『アウグストゥス』の主役は柚香光くんで、ヒロインは華優希ちゃんに間違いない

演出の田淵先生は、世俗の価値観を越えた「精神世界の英雄」となった、若きオクタヴィウスの「精神性」を柚香光君で描きたかったのだと思います。
愛憎渦巻く激動の時代の中で、オクタヴィウスは冷静沈着で、戦いを好まず、深く考え苦悩しながら、「精神面」を磨いていって「ローマの平和」を求める指導者に成長していきます。

「精神面」を強調したいために、敢えて「視覚面」をそげ落としたのかなと、私は勝手に思っています。史実通りに描いたということもあるでしょう。(史実ではオクタヴィウスは超美男子でもあったそうです。それは柚香光君とピッタリ合っています。)

はじめは「父親の仇を取りたい」という憎しみに満ちていた華優希ちゃんですが、その精神のあり方が変化していって、その変化がオクタヴィウスの成長の助けとなります。
ふたりの魂で繋がっている関係性が、この話の軸の一つになっています。

芝居巧者な息のあった二人だからこそ、深い「精神性」まで描けるのだと思いますが、当たり前の役では無いので、大劇場という大きな空間では、視覚だけで捉えていたら、このあたりが伝わりにくいところがあります。

「ナウオンステージ」で柚香光君もそのことを理解しているようで、下記のように話していました。

本当にわかりやすくない関係性で、よくあるドラマチックな関係性では無くて、難しいのですが、それが確実に芽生えた時は、とても大きな力になるとは信じていますので、一刻もはやく、そういうものを2階席の後ろのお客様まで感じていただけるようになるお芝居ができるようになると良いなと思っています。

このあたりを深く理解できたら、芝居巧者コンビの集大成にふさわしい作品だと、感動をすることができると思います。

この時代は「市民の声」が、大きく政治を動かすことがわかります。「暁のローマ」でもそれが面白く描かれていましたが、『アウグストゥス』でもそうで、その市民の声が伝わってくるほど面白くなると思います

若いトップスター柚香光君には、オーラと芝居力で、この芝居の軸をしっかり見せるという試練が与えられているように思います。

これが瀬戸さんの退団公演でなかったら、上級生でなかったら、このようなトップスターに試練が与えられることは無かったのでは?と私は勝手に思うのです。
試練を乗り越えたら、より一層スターとしてのオーラや魅力が増すことは確実でしょう。

月組の上級生2番手の退団公演

「上級生2番手の退団公演」というと、2019年美弥るりかさん退団公演の『夢現無双』『クルンテープ 天使の都』を思い出します。
この時は美弥さんの「佐々木小次郎」役があまりに軽く描かれていて、「見せ場」が無かったと大批判を浴びていました。

その時のことを踏まえて、瀬戸さんの退団公演は「見せ場」が多かったのかも、とも思います。(私の勝手な憶測です)

ビラミット型のスター配置が最善
長く宝塚を見ている私には、トップスターが最上級生で路線スターは下級生で、ビラミット型のスター配置が最善だと思っています。
そしてトップスターの衣装が一番豪華で、目立つ登場の仕方をして、強いライトを浴びて、大きな拍手を受けて…
2番手は「将来のトップ候補」として経験を重ねて。
古い考え方でしょうか?

宝塚は序列の社会なので、上級生は絶対に重んじられる存在です。トップスターになっても、上級生は「上級生」。
瀬戸かずやさんも美弥るりかさんも、人格的にすばらしいから「上級生2番手」になられたのだと思います。
トップスターの大きな精神的な支えであり、助けだったでしょう。
しかし、気をつかう面もあって、トップスターのオーラを全開に輝かすことの足かせになる部分も少しはあるのでは?と思うのです。特に退団公演になると余計に。

例外は望海風斗さん

『壬生義士伝』で望海さんが演じた吉村貫一郎は、極貧の下級武士で新選組に入隊後は、お銚子が乗った盆を手に酒をついで回ったり、小銭を這いつくばって数えたりと、普通に考えてトップスターが演じる役ではありませんでした。
しかし望海さんの渾身の熱演によって、素晴らしい作品に仕上がりました。

『fff-フォルティッシッシモ-〜歓喜に歌え!〜』 でも、2番手の彩風咲奈さんがナポレオンの豪華な戴冠式の衣装で登場するシーンがありました。
通常はトップスターより豪華な衣装を下級生が身に着けないものですが、望海さんほどの圧倒的なトップスターになると、全く関係ありませんでした。

望海風斗さんが上級生の圧倒的なトップスターだったからこそ、この構図が成立したとも言えます。
トップ2作品目の柚香光君には、この構図は少し難しかったのかもしれません。

れいくんが「ナウオン」で語っていたように、日々芝居が深められていっていると思うので、頑張って欲しいなと思います。

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