宙組「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」感想と夢白あやちゃん
宙組バウ公演「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」を金曜日に観劇してきました。

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宙組バウ公演主演、瑠風輝さんの楽屋出に遭遇

この公演は木曜日が初日でした。ちょうどその日、大劇場の午後3時公演が終了して外に出たら、主演の瑠風輝さんの楽屋出と重なりました。
(バウホールの楽屋出は、バウホールからの階段を降りた所から中央ゲートの辺りまでで行われます。)
長身でスタイルが良くて、花組公演を観ての帰り道の人たちは、「スタイルええなぁ」「背高いなぁ」とか口々に言っていました。
しかし驚いたのは、「もえこ・瑠風輝」の認知度はあまり高くないこと。

私のように全組の公演を見て、全組好きな者は少ないのでしょう。
私は翌日バウを観劇予定だったので、自ずとワクワク感が増しました。

「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」作品について

そして作品は、とっても面白かったです。
ファンタジーですが、ややブラックユーモア的な風刺がきいた、深いメッセージ性のあるもので、宝塚では、「フィナーレ」で ザ・タカラヅカを魅せてもらうことで、そのあたりがごまかされています。

原作はフィッツジェラルド「The Diamond as Big as the Ritz」。
月城かなとくんが『THE LAST PARTY』で演じた、アメリカ文学を代表する小説家です。

リッツくらい大きなダイヤモンド』が著書の題名で、宝塚で上演するにあたり、「リッツ」だけじゃあ宝塚ファンに分かりにくいだろうと、「リッツ・ホテルくらい」と
木村先生が「ホテル」と「に」を追加されたようです。

私は単細胞で、飛び込んでくる文字のイメージで物事をとらえるので、最初にタイトルを見た時は、「ホテルの話」なのかと、誤解しました。
公演の解説を読んでホテルとは全く関係ないことを理解しました。

巨大なダイヤモンドの原石の中に建てられた豪華な館の中での話でした。
ここがもう、ありえないファンタジーなのです。
豪華な館は、まるまる全体が「リッツホテル」くらいの、大きなダイアモンドの原石でできていたのです。
そこから、『リッツくらい大きなダイヤモンド』という題名になっています。
富裕者を対象にして栄華をほこっていた「リッツホテル」が、比較対象になっていることが、この話の重要な点です。

富がもたらす熱狂、狂乱を主題とした壮大な夢物語

観劇前の事前情報

スカステニュースの稽古場情報、ナウオンステージ、稽古場風景では、ファンタジーとコメディ的な点が強調されていました。

・実家は楽園、
・滑り台で部屋を移動、
・楽園ではミュージカルでおもてなし、
・男子禁制のキスミンの部屋。
・キスミンには、沢山のお友だち兼お手伝いさんたちがいる。
・今までにない素材でできた近未来の乗り物が出てくる。

ファンタジーなコメディなのか?と思いましたが、ナウオンの中で、悠真倫さんが、
「何とも言えない世界観、お化け屋敷に近い世界観」と仰っていたので、「単なるファンタジー、コメディでは無いのか」という認識は持ちました。正にそうでした。

大まかなあらすじ

アメリカの大学に通うジョン(瑠風輝)は、友人のパーシー(鷹翔 千空)に誘われて、彼の実家を訪ねることとなります。
パーシーの実家は、父親の悠真倫母親の美風舞良が、ヨーロッパの王族のような衣装をまとい、召使いもそうで、贅を尽くした「黄金の楽園」のような場所でした。
ジョンは、パーシーの妹キスミン(夢白 あや)と出会い、恋におちていきます。
そして次第に楽園の秘密が明らかとなっていきます。
この部分の記述は控えます。
原作は、結末が少し違うようですが、宝塚ではジョンとキスミンの夢がみえる恋物語として終わりました
1度幕が降りて、深く考えそうなところで、フィナーレの幕が上がるので、この作品が訴えるメッセージ性も薄められて宝塚の世界に浸って終わります。

出演者の感想

ジョン役の主演のもえこちゃん(瑠風輝)
歌唱力抜群!
難しそうなナンバーでも、朗々と歌い上げ、心に響いてきます。
若手でこんなに歌える人は貴重です。
演技力も十分
セリフに緩急をつけていて、楽園の正体に気づいていく中での、心の描写がよく伝わってきました。

174cmの高身長で、手足が長く、スタイル抜群。
長身、脚長でのタキシード姿は、惚れ惚れします。

ヒロイン・夢白あやちゃん
華やかで、気品があって、舞台メイクが映えて美しいです。金髪もよく似合っていました。
表情が豊かで、「かわいい」と思えるところも、沢山。
お姫様のような衣装もよく似合っています。
プログラムについている「稽古場」の写真を見ると、ガリガリから少しお肉がついたような感じがしました。

ちょっと浮いた感じが、キスミン役にピッタリで、次第に心を開いて打ち解けていく表現ができていました。
長身のもえこちゃんに対して、娘役としては大きくないあやちゃんのサイズ感がピッタリ。

もえこちゃんに合わせて、ヒロインとしては歌が多い中、まだ安定していない部分もありますが、歌えていました。
努力されたのでしょう。
ダンスは、とても上手なので、あと努力するべきところは歌でしょう。

木村先生からお稽古中に「殻を破れ」と言われ続けていたようですが、殻が破れ、感情を表現した、肩に力の入らない自然な演技ができる途上だったと思います。
「この舞台はキスミンにかかっている」と木村先生が仰ったそうで、責任重大。頑張っていました。
娘役としての美貌、実力は、準備OKだと思いました。
華があってヒロイン力の高いあやちゃんは、これから使われていくと思います。

2番手男役のこってぃ(鷹翔 千空)
闇を抱え、心が屈折したパーシー役、こわい目の表現などお上手でした。
「鍵を握る」重要な役どころ、難しくて多分悩んで悩んで挑まれたのだろうと思いますが、丁寧な演技で伝わってきました。
175cmの長身で抜群のスタイル、101期首席入団、初詣モデル、新公主演2回。
歌えて、踊れて、演技も上手で3拍子揃っていますが、欠けるのは「華」。
素顔が地味目で、舞台でも「優等生」という殻がまだ打ち破れていないかな。今回そういう役柄でもあります。

もえこちゃん、こってぃに共通するのは、「華」が今少しなところだと思います。
スターとしての華、あかぬけた魅力、スター性が身につけば。

「ビジュアルか実力か」これが宝塚の課題で、実力重用に傾いていると言われつつも、若手の頃の人気はビジュアル重視に傾いています。
宙組97期の留依蒔世くんも、歌の魅力は宝塚のトップクラスでダンスも抜群なのに、人気は?というと、まだまだこれから。

亜音有星くん(103期)
オーシャンズ11」の新公でベネディクト役の思い切りの良い演技で注目されて、甘いフェイスのイケメン
囚われの飛行士ユージン役で、一人だけ目立つ役どころで、台詞もありました。
かたい演技は、学芸会的な演技に見えるところが…。
ベネディクト役の時は堂々と自然に演技できていたので、今回は緊迫した雰囲気の中での、命をかけた任務遂行なので、かたさは演出なのか?

華のあるイケメンなので、後ろの方にいても目立ちます。単に私が探して見つけイケメンぶりを眺めているとも言えます。(笑)
今回も舞台に全員が一列に並ぶと、花道の端で下から数えてはやい下級生。
華がありイケメンな亜音有星くん、愛称キョロちゃんは応援し、見守っていきたい期待の若手男役さんです。

小春乃さよちゃんの美しい声のソロ
スカイステージのナビゲーターとして、お馴染みになってきたさよちゃん。
歌は絶品です。今回は1曲のソロだけでしたが、本当に美声でうまくて、聞き入ります。

客席降りが多い!

芝居なので、客席通路で芝居をしているシーンが多いので、もえこちゃんこってぃを身近で見ることができます。
何度か数えきれないくらい。
もえこちゃんは大汗をハンカチで拭きながら、客席でも熱演していました。
若手が客席で、普通にお芝居をすることは、とても緊張するし、エネルギーのいるだと思います。

残念ながらあやちゃんの客席おりはありません。

フィナーレがついている

羽山先生の黒燕尾の振付、「黒燕尾が初めて」の若手もいたようですが、みんながんばっていて、素敵でした。
星組の『エクレール ブリアン』と同じような蹴りが入っていたり、羽山先生らしい。
真ん中で長身のもえこちゃんこってぃが踊るので、カッコ良さをリードしていて、見ごたえありました。

技術の高いデュエットダンス
もえこちゃんとあやちゃんのデュエットダンスは、本公演のトップコンビのものに近いくらい、技術力が高く、魅せ方もきれいでした。
もえこちゃんは以前はそれほどダンスに秀でていなかったと思いますが、「ダンスの人」と言っていいくらいあやちゃんをリードして踊っていました。
回転リフトと、最後にフワッとしてリフトの2回がありました。

富がもたらす熱狂、狂乱を主題とした壮大な夢物語

舞台のはじめに「アメリカ讃歌」のような歌があります。
「富に狂喜し、それを守るために、社会から孤立して生活する気違い染みた家族」は、高騰する証券市場によって、経済が沸き返っていた1920年代のアメリカの世相を反映した、人間の欲望が描かれているのだと思います。
そして、その全ての富を失いそうになった時、神に向かって紙幣をささげ、神様をも買収しようとする、常軌を逸した傲慢さをアレキサンドル役の悠真倫さんがあわれな姿で見せてくれます。
神様をも、金で自分たちの思い通りにしようとする。アメリカの体制は、1920年代だけでなく、現在にも通じています。
悠真倫演じるアレキサンドルの姿が、アメリカ、ひいてはアメリカと手を結んでいる日本に通じるかも。
先月月組で上演された『チェ・ゲバラ』とそのあたりのメッセージ性に、似たところを感じます。
「富」に対する夢物語、それは他人事では無い、と自省する部分もありました。

脚本・演出は、木村信司先生

私は春野寿美礼さんの大ファンですが、彼女がトップスターとして活躍していた頃、木村先生は大劇場作品でも大活躍されていました。
今回もスカステニュースに「公演紹介」に先生みずから出演されていましたが、春野さんがトップの頃も気さくにスカイステージの番組に出演されて、「おさあさトーク(春野寿美礼・瀬奈じゅん)+木村先生」は、最高に楽しかったです。
今でも変わらず、とても気さくで、エネルギッシュな先生で、枠にとらわれない大胆な発想をおもちで、そのスケールの大きさ、新しさが好きです。
今回の「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」は、宝塚の枠を越え過ぎた「トンデモ」舞台ですが、楽しめました。
テンション高く、誉めながら生徒を導いておられるように感じました。
木村先生のようなベテランの先生が、若手のバウ公演を担当されることは、とても意義があって良いと思います。
木村先生には、まだまだ頑張っていただき、春野寿美礼さんが活躍されていた頃の閃きの舞台がまた観たいです。

「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」は、とても楽しい魅力的な舞台でした。
下級生だけでこのような充実した舞台をつくりあげることができる宙組は、本当に底力があります。

もう一度観劇予定です。夢白あやちゃんたちの進化が楽しみ♪

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